研究実績の概要 |
2022年度は一様磁場のかかったT^2/Z_N(N=2,3,4,6)オービフォールド模型における世代数構造(Atiyah-Singerの指数定理)の導出を2通りの方法で行なった。一つ目の方法は2021年度にT^2/Z_2オービフォールド模型における証明で用いた方法と同様の方法で、N=3,4,6の場合に指数(世代数)をトレース公式により具体的に計算することによって求めた。二つ目の方法は、オービフォールド模型に存在する固定点を除去し、滑らかな多様体(blow-up多様体)を構成することにより、Atiyah-Singerの指数定理を直接適用し求めた。オービフォールド模型は固定点を持ち、固定点が特異点であるためにその世代数構造の解析が困難であった。そこで、オービフォールドの固定点周りを切り取り、その切り取り口に合わせて、切り取った部分と同じトポロジカル(位相的)な情報を持つ、一様磁場のかかった球の一部を埋め込んだ。これにより、特異点による穴が塞がり、滑らかなblow-up多様体を構成できる。blow-up多様体構成の際に重要な点は、オービフォールド模型が持つトポロジカルな情報を保ったまま、接続をすることだ。この方法によって得られた結果は一つ目の方法による結果と一致している。これらの結果に対して、論文を発表し、国内・国際研究会において研究発表を行なった。 また、ある特定の余剰次元模型において、運動方程式とアノマリー相殺条件から世代数を制限することに成功した。10次元の超重力理論から出発し、6次元余剰次元が2次元多様体3つから構成されている場合を考えた。運動方程式とアノマリー相殺条件によって、世代数を決定するパラメータである磁束量子化数の取れる値に制限がつくことから、世代数への制限に繋がった。この結果に対して論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は一様磁場のかかったT^2/Z_N(N=2,3,4,6)オービフォールド模型における世代数構造を明らかにした。二つの方法を用いて解析を行なった結果、一様磁場のかかったT^2/Z_N(N=2,3,4,6)オービフォールド模型において世代数は一様磁場による磁束量子化数と、固定点に局在する磁束によって決定されることが明らかになった。これまでの研究からwinding numberによって世代数が決定されることが明らかであったが、その表式の物理的意味は明確ではなかった。本研究により、winding numberは固定点に局在する磁束と曲率の寄与を含んでいることが明らかになり、世代数に寄与するのはその内の固定点に局在する磁束のみであることがわかった。 また世代数制限の観点からも本年度は大きな前進があった。特定のset upで滑らかな多様体の場合に世代数を制限することに成功した。今後はオービフォールドを含む余剰次元のコンパクト化を考えた場合に、世代数がどのように制限されるかを検証したい。
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