研究課題/領域番号 |
21J21277
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
繁森 弘基 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | CRISPR / DNAセンサ / 多項目検出 / マイクロアレイ / 変異解析 / 迅速診断 / 電気化学センサ / POCT |
研究実績の概要 |
本研究は、細菌・古細菌の獲得免疫機構として知られるCRISPR/Cas12システムが標的遺伝子に対して迅速かつ特異的に認識し、同時にssDNA切断を応用した信号変換を行うことに着目した。そして、CRISPR分子(Cas12及びssDNA)をマイクロ流路やFET等の電極センサアレイ上に修飾した迅速病原微生物同定技術の実現を目指す。 本年度は研究開発の概念実証として、①Cas12及びssDNAレポーターを修飾した表面におけるコラテラル切断反応の確認、②Cas12/ssDNA修飾表面を利用したワンポット多項目dsDNA検出の検討、③アレイ集積化を指向したCRISPR試薬のスポッティング法の検討に着手した。 ①においては、まず基板表面に対するCas12の化学修飾方法を数種類比較し、最も高いコラテラル切断活性を示す条件で修飾方法を最適化した。この基板表面に対して、蛍光標識したssDNAレポーターも同時に修飾し、固相系コラテラル切断型dsDNAセンサを開発した。実際、本センサ上に標的dsDNAを添加したところ、コラテラル切断由来の蛍光減少が計測できた。 ②においては、上記のCas12/ssDNAレポーター修飾表面を2つのスポットにパターン化し、2種類の標的dsDNAの識別を試みた。サンプル中にスポットが標的とするdsDNAが含まれている場合は、スポット蛍光強度が40~60%程度減少した。一方、標的配列とは異なるdsDNAが含まれている場合において、スポット蛍光強度はdsDNA非存在条件と比較してほとんど減少しなかった。以上のことから、本センサを使用したワンポット多項目dsDNA検出が立証された。また、配列特異性は2塩基レベルであった。 本年度後半より、検出項目数の増加を目的として③に取り組み、CRISPR試薬の吐出及び修飾条件を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、多項目の遺伝子変異を同時に検出する上で必須となる、異なる遺伝子配列を同一の反応場中で選択的に補足し、かつCas12に特徴的なコラテラル切断活性を用いて、標的DNA毎に信号取得可能な系の原理検証と最適化を実施し、国内学会(口頭2報, ポスター2報)、国際会議(ポスター3報, 内受賞1)などでの成果報告や、国際誌への発表及び知財化の手続きを進め、おおむね順調に研究が進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、まずCRISPR試薬をスポットしたアレイ上においてdsDNA検出の実現に着手する。昨年度に判明した技術的課題として、吐出した液滴の蒸発によるCas12の活性低下が挙げられるため、安定剤の添加や修飾時間の検討により吐出したCas12の活性維持を試みる。 上記目的達成後は、9項目アレイを作製し、呼吸器感染症判別やSARS-CoV-2の変異解析への応用を目指す。 更に、本センサアレイをマイクロ流路型迅速核酸増幅デバイスと統合し、検出系も蛍光から電気化学に移行することで、ポイントオブケアを指向した迅速病原微生物同定の実現を目指す。
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