研究課題/領域番号 |
21J21801
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中岡 藍 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | エクソソーム / マイクロRNA / 放射線抵抗性 / 転移 |
研究実績の概要 |
本研究では、エクソソーム内のマイクロRNAを介して放射線抵抗性のがんの抗腫瘍効果を高める手法を開発することを目的とする。放射線治療は非侵襲的であり、がんへの高い局所制御が期待できる標準治療の一つであるが、転移性のがんや放射線による抗腫瘍効果が得られにくい放射線抵抗性のがんなどのいわゆる難治性のがんに対する治療の開発は十分でない。本研究では、細胞から放出される膜小胞体であるエクソソームを介したマイクロRNAの輸送により、がんの放射線抵抗性を制御する手法の開発を試みる。 昨年度は、放射線抵抗性のモデルとして、ヒト膵がん細胞をヌードマウスの脾臓に投与することにより、肝転移巣形成モデルマウスを作成することに成功し、このモデルマウスにエクソソームを投与した時の肝転移巣形成や生存率の変化に対して解析を行い、エクソソームと肝転移巣形成の相関を見出した。また、放射線照射されたがん細胞や放射線照射されたがん細胞から単離したエクソソームを投与したときの転移巣形成についても同様の解析を行い、エクソソームの放射線応答を介した肝転移巣形成と生存率への相関を見出した。 今後は、エクソソーム内のマイクロRNAによる肝転移巣形成制御の分子メカニズムの検討を行うため、肝転移形成に関わる転移関連分子を同定し、細胞内での発現量を生化学的手法で解析し、さらにその分子の発現を制御しているエクソソーム内マイクロRNAの同定をマイクロアレイ解析等によって行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、当初の実験計画目標であった放射線抵抗性を制御する分子の同定までは至らなかったものの、放射線抵抗性のマウスモデルを作成し、エクソソームと肝転移巣形成の相関関係を放射線応答の観点も含めて見出すことはできたため、やや遅れてはいるものの、今年度以降の実験でエクソソーム内のマイクロRNAによる転移関連分子の制御に関して見解が得られれば、当初の目的を果たすことは可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
観察実験により見出した、エクソソームによる肝転移形成制御に関して、in vitro系において、その分子メカニズムを検討する。 エクソソームを添加した膵がん細胞での転移関連分子の発現量変化を生化学的手法で解析し、肝転移形成において有意に発現量が変化する分子を同定する。エクソソーム内のマイクロRNA発現量を網羅的マイクロアレイを用いて解析し、肝転移形成にあたり転移関連分子の発現量を制御するマイクロRNAを同定する。同定したマイクロRNAをトランスフェクションさせた細胞の浸潤能、転移能変化等を評価し、エクソソーム内のマイクロRNAを介した肝転移形成制御の分子メカニズムを検討する。 関連分子の同定がうまく進まない場合は、必要に応じて担癌マウスの腫瘍組織から単離したエクソソームを用いた実験および解析を検討する。
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