研究課題
昨年度は、まずMIAPaCa-2細胞以外にヒト膵がん細胞としてBxPC3、Panc-1細胞を用い、エクソソームによる遊走能および浸潤能制御の検討を行った。3種すべての細胞株由来のエクソソームが細胞の遊走・浸潤能を抑制する効果をもたらし、放射線照射後の細胞由来のエクソソームではその効果が有意に増加することを示した。また、MIAPaCa-2細胞由来のエクソソームに対するマイクロアレイ解析の結果から、細胞の遊走・浸潤能の抑制に関与する1種類のマイクロRNAを同定した。また、このマイクロRNAが相補的な塩基配列を介して標的とする分子をTargetScanを用いて同定し、そのマイクロRNAのMimicを細胞へ導入することによりこの分子の発現が有意に抑制されることを示した。さらに、これら3種の細胞株由来のエクソソームが細胞の生存率へ与える影響を検討し、2 Gyまたは5 Gy照射後の細胞由来のエクソソームを細胞へ添加することで細胞の生存率が有意に低下し、その効果は放射線の線量依存的に増加することを示した。これまでの研究を通し、放射線照射後のヒト膵がん細胞由来エクソソームは、周囲の同種細胞に取り込まれることで、内包された特定のマイクロRNAを介した転移関連分子の発現量制御を行い、細胞の遊走・浸潤能および細胞の増殖抑制を誘導し、転移巣形成を抑制する可能性があることをin vitroおよびin vivoの両方の結果から示した。これらの成果は、本研究の当初の目的であった、細胞から放出される膜小胞体であるエクソソームを介したマイクロRNAの輸送により、がんの放射線抵抗性を制御する手法の開発の足掛かりになり得ると考える。研究成果は国内外の学会で発表を通して共有し、論文を作成中である。
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すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)