研究課題/領域番号 |
22J10314
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
周 源 神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 中国 / 対外プロパガンダ / フォーマルモデル / 自動内容分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国の対外プロパガンダを政権安定化の手段という視点から捉え、そのうえで中国の対外プロパガンダ内容を体系的に分析することで、理論と実証の両面から中国の対外プロパ ガンダ戦略を解明することを目的として、分析を行なってきた。本年度の研究業績について、3点に分けて以下に記述する。 第1に、中国の攻撃的な対外プロパガンダのメカニズムを解明するためのフォーマルモデルを構築した。モデルを用いて分析した結果、権威主義国家において、強いタイプのリーダーは攻撃的な対外プロパガンダを自分のタイプを示すシグナルとして使える。攻撃的な対外プロパガンダは自国の国際イメージの改善に効果がないが、国内の反抗を抑止する効果がある。 第2に、中国国営メディアの新型コロナウイルス感染症に関する英語の記事を収集・分析した。自動内容分析の結果によると、中国の国営メディアはコロナを報道する時、常に中国をポジティブな論調で、アメリカをネガティブな論調で伝えることがわかった。つまり、中国の対外プロパガンダにおいても、ナショナリズムを扇動することで共産党政権の正統性を維持しなければならない。 第3に、中国外交官のTwitterへの投稿を収集・分析した。構造的トピックモデル(STM)を使って分析した結果、中国の外交官は民主主義的な価値を否定し、権威主義体制の優位性を宣伝する内容を多く発信したことがわかった。これは個人独裁体制に戻った中国において、外交部門の官僚は部門の影響力の拡大、そして個人の出世のため、習近平が求めている「闘争精神」に従って攻撃的な対外プロパガンダを積極的にやり始めたと考えられる。 以上の3つの研究は博士論文にまとめ、2023年1月に神戸大学法学研究科に提出し、2月の最終試験に合格した。今後、これを基に、書籍として出版も可能な状況まで到達することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
博論の各章は日本国際政治学会、日本政治学会、ISA、APSAなどの学会で報告され、国内外の多くの研究者からフィードバックをもらった。そのため、博論の執筆は順調に完成した。2023年3月は、神戸大学の博論審査を通過した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、博論の書籍化と同時に、2つの共同研究を進めると考える。第1に、博論の内容と分析をさらに完全し、Cambridge University Press など一流の大学出版社から刊行することを目指す。第2に、国際非難と女性の権利に関する共著論文を完成し、IPSAで報告する。第3に、非民主的ナラティブの拡散とその効果に関する共同研究について初期的な分析を完成し、日本政治学会とAPSAでポスター報告を行う。
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