研究課題/領域番号 |
22J10557
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
特別研究員 |
木村 彩音 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | オーストラリア先住民 / トレス海峡諸島民 / 記憶の継承 / 多様な祖先 / 和歌山県 / 系譜 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、オーストラリア北部のトレス海峡諸島、木曜島のトレス海峡諸島民を対象として、移民祖先の系譜が先住民にとっていかなる意味を持つのか人類学的に検討することを試みた。しかし当該年度の8月ごろまで、新型コロナウイルス感染症拡大による渡航制限などで、海外への渡航が叶わなかった。また渡航制限が緩和されてからも、調査地、トレス海峡諸島側で現地調査を一時的に受け入れられない事情が生じたため、当該年度中は結局、オーストラリアでの現地調査を実施することはできなかった。 それを補うために、オンラインで現地の人々と連絡をとりながら、インタビュー調査や細かな事実確認などをおこなうとともに、日本国内の研究機関でできるだけ広く文献収集をおこなった。また移民を数多く送出した和歌山県にも足を運び、文書館、博物館、図書館などで手掛かりを探った。その過程の中で、移民祖先の出身地と思われる集落とのコネクションを得るなど、一定の成果は挙げられた。またかつてトレス海峡諸島で調査をしていた研究者ともコンタクトを図り、その時点での研究状況についてコメントをもらうなどした。 こうした限られたリソースの中でも得られた文献、データの検討に専念し、研究発表、論文執筆などに注力した。またこの期間に、学位論文の筋道をつけ、海外調査が実施できた際に収集するべきデータをさらに明確にするようにした。 なお、こうしたデータやリソース不足を補うため、指導教員の共同研究で仙台、気仙沼の短期調査に同行し、日本の漁村集落の社会的文化的状況の観点から、和歌山県との比較対象とするためのデータを収集することなども試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度中は海外へ渡航することができなかったため、予定していた現地調査を実施することができなかった。そのため、オンライン調査や日本国内で手に入る文献など、限られたデータ源に頼るほかなく、その結果、研究発表や論文もその範囲内での議論しか展開することができなかった。その分文献渉猟はかなりの程度捗ったといえるが、独自の研究を展開することは難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、予定していた海外調査に加え、日本国内での現地調査を実施し、遅れを取り戻したいと考えている。オーストラリアのトレス海峡諸島では、木曜島を中心にとして近隣の島々を含めた現地調査を実施する。具体的には、移民祖先をもつトレス海峡諸島民への聞き取り調査、墓石除幕式など祖先に関わる儀礼の参与観察、墓地のマッピング、墓碑の記録などを予定している。日本国内では、当該年度に和歌山県東牟婁郡串本町近辺で、移民祖先の出身地と想定される集落とのコネクションを得ることができたので、今後はそこでの現地調査を試みたい。そこでは、移民祖先の墓の所在、彼らの親族の所在、移民に至る経緯などの調査を想定している。これらの調査の成果を合わせて、これまでの研究の遅れを取り戻したいと考えている。
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