研究課題/領域番号 |
21J22668
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
竹渕 優馬 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ドシメータ材料 / 単結晶 / フッ化物 |
研究実績の概要 |
Tm添加NaMgF3単結晶の育成を行い、ドシメータ特性に対するTm濃度の依存性の評価を行った。作製したサンプルのX線回折パターンを測定したところ、Tm濃度が0.3%以上の時、原料粉末として使用したTmF3が不純物相として現れることを確認した。そのためTm濃度が0.3%以下のサンプルを作製し、特性評価を行った。サンプルの熱刺激蛍光 (TSL) グローカーブでは全てのサンプルが母材の内在欠陥に起因すると考えられるグローピークを80および180 °C付近に呈した。Tm濃度が0.3%のサンプルが最も高い発光強度を示し、TSL線量応答特性におけるX線の測定下限値が0.01 mGyであることを明らかにした。この値はC添加Al2O3などの実用化されている個人被ばく線量計に匹敵する値である。またTSLを用いたX線イメージング試験を行ったところ、電子部品の内部透過画像の撮像に成功した。イメージング試験では0.3%Tm添加サンプルが1.0 mm以上の空間分解能の空間分解能を有することを明らかにした。上記の結果からフッ化物ペロブスカイト単結晶が被ばく線量の見積もりだけでなく、2次元の線量分布測定に対しても有望な組成であることを見出した。上記の結果は応用物理学会、極限的励起状態の形成と量子エネルギー変換研究グループ 第3回研究会で発表され、講演奨励賞を受賞している。またSens. Mater.誌にアクセプトおよび掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の研究ではTm濃度が0.3%以上の時に原料であるTmF3が析出してしまう問題が生じた。本研究では単純固化法を用いてサンプル作製を行なっているため、母材のNa+およびMg2+に対してイオン半径の大きいTm3+イオンが固溶されづらいことが原因であると考えられる。一方でTm添加濃度が0.3%のサンプルから最も高い発光強度が得られたため、より高濃度の添加物を固溶することができれば、発光特性の向上が期待できる。今後はより高濃度に発光中心元素を添加できるサンプル作製方法の模索が必要であると考えられる。これと並行して、より高濃度の添加が可能な母材-発光中心元素の組み合わせを探索することも必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
より高性能なドシメータ材料の開発のために今後は母材-発光中心元素の組み合わせの最適化を行う。はじめにNaMgF3にTm以外の希土類元素を添加したサンプルを作製する。作製したサンプルのXRDパターンを測定し、単相で得られたサンプルについて添加物およびその濃度に対する発光特性の変化を調査する。その後母材のNaおよびMgを他の元素に置き換えたサンプルを作製を行う。NaMgF3と同様にXRDパターンの測定を行い、単相で得られたサンプルについて特性の評価を行う。特に軽元素で構成された母材では個人被ばく線量計への応用を想定した測定、重元素で構成された母材ではイメージングプレートへの応用を想定した測定を中心に特性の評価を行う。
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