一般家庭における行動認識の課題として,間取りや居住者属性などの環境要因だけでなく,設置できるセンサとそのセンサから得られる情報が異なることが挙げられる. したがって,多くのユーザにとって利用しやすく,かつ分析可能なデータを提供するセンシング基盤の開発を目的とする.具体的には,居住者が自身の判断に基づいて構成を自由に組み換えられるセンシングシステムと,異なるセンサ構成の家庭間におけるデータ転移・共有手法を開発し,生活に基づく見守りや行動推薦等の高度なアプリケーションに必要な情報を提供する,ホームAPIシステムが必要である. 最終年度は,スマートホームにおける様々なセンサを利用した行動認識手法に関する研究に加えて,一般家庭におけるマイクロ行動認識手法の開発や,行動認識結果から得られる情報を基にした行動変容の手法を開発した.具体的には,ドップラーセンサやピエゾ素子を用いた振動センサ,LiDARによる3次元点群情報をそれぞれ用いた行動認識手法を開発した.また,一般家庭から収集したデータを用いて,従来のマクロな行動認識よりも粒度の細かい,マイクロ行動認識手法の検討を実施した. 研究期間全体を通じて,人感・環境センサだけでなく,音や映像,無線信号,ウェアラブルデバイスから行動認識および健康状態の推定や,行動変容手法の検証までを通して実施することが出来た.また,複数居住者のための行動認識手法の開発も行い,多様な宅内センシング技術を開発することが出来た. 一方で,家庭間の違いを補正する手法に関する検討は十分に行えておらず,本研究期間で培った技術を元に,ドメイン適応技術や宅内デジタルツインを活用しながら検証を続ける計画である.
|