本研究は創薬初期段階において医薬候補化合物の活性や物性を最適化するプロセスのための構造展開を効率化する手法の提案を目的としている。このために類似する構造を有する化合物間に軽微な構造の変化が生じた際に、その生物学的活性が 劇的に変化するactivity cliff(AC)という現象に着目している。解釈可能なAC予測機械学習モデルを構築することで既知の化合物群から派生した構造を有しながら、より高い活性を有する医薬候補化合物の提案を目指す。 2022年度は当初の計画であるメタ学習を採用した複数の標的マクロ分子に対する活性情報を学習に用いた深層学習モデル構築のための事前検討として、単一の標的マクロ分子に対する情報のみを使用した予測モデルを構築し、従来の手法との比較を行った。既存研究で報告がある予測モデルは、その検証に用いられている標的マクロ分子の種類が限定的であるため、標的マクロ分子の種類によらず予測能の高いモデルの構築を目指した。種々の入力化合物の表現手法および学習器により9種類の予測モデルを、100種類の標的マクロ分子に対し構築することで大規模な予測精度の比較を行った。その結果、深層学習を用いた手法では従来手法にわずかに劣る精度が示され、またその精度は学習データの正例と負例の比や、学習データと検証データの類似性に大きく影響を受けることが示された。この研究結果はJournal of Cheminformatics誌に掲載された。
|