研究課題/領域番号 |
22J40140
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
渡邉 むつみ 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 硫黄代謝 / 硫黄欠乏応答 / 植物二次代謝 / 比較ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
硫黄欠乏応答遺伝子であるSDI (Sulfur Deficiency-Induced) は、アブラナ科特異的特化代謝物であるグルコシノレートの生合成の抑制因子であることを先行研究において特定したが、アブラナ科以外の植物種での機能は不明である。本研究では、双子葉作物 (トマト、ダイズ)、単子葉穀物 (イネ) 及びグルコシノレート代謝多型が報告されている作物種を含むアブラナ科6種について、SDIオルソログ遺伝子の機能分化と機能保存性について実験的に解析を行うことで、植物の硫黄欠乏適応代謝機構の包括的な理解を目指す。 1) SDIオルソログ遺伝子の特定: 植物22種のSDIオルソログ遺伝子配列を入手し、アミノ酸配列を用いた配列相同性/系統樹解析及びシンテニー領域解析を行い、アブラナ科植物6種、トマト、ダイズ、イネのSDIオルソログ遺伝子群を特定した。さらに、各植物を用いて硫黄欠乏実験を行い、遺伝子発現解析により硫黄欠乏応答性を評価し、SDI候補遺伝子(計26遺伝子)を特定した。また、硫黄欠乏実験の植物サンプルの代謝物分析を行い、硫黄欠乏時に変動する特化代謝物を見出した。 2) SDI候補遺伝子の機能解析: 1)で得られたSDI候補遺伝子の過剰発現体やノックアウト変異体の作製に向けて、遺伝子クローニングを開始し、現在までに、候補遺伝子計26遺伝子中、15遺伝子のクローニングが完了した。それらの内、7遺伝子についてはシロイヌナズナを用いた過剰発現体のT1スクリーニングが終了し、現在、遺伝子発現解析や代謝物分析を行っている。また、各植物を用いた形質転換体作製に向けて、カルスを利用した形質転換法や一過的発現法の系を確立中である。 3) 植物種間比較ゲノム解析: 1)の解析を他の植物種へ拡張するために、約60種のゲノムデータセットを用いてシンテニーネットワークを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SDIオルソログ遺伝子の配列相同性/系統樹解析及びシンテニー領域解析や、硫黄欠乏応答性解析により、アブラナ科植物6種、トマト、ダイズ、イネのSDI候補遺伝子(計26遺伝子)を特定することができた。また、SDI候補遺伝子の過剰発現体やノックアウト変異体の作製に向けて、候補遺伝子計26遺伝子中、15遺伝子のクローニングが完了した。それらの内、7遺伝子についてはシロイヌナズナを用いた過剰発現体のT1スクリーニングが終了している。また、各植物を用いた形質転換体作製に向けて、カルスを利用した形質転換法や一過的発現法の系の確立を開始した。植物種間比較ゲノム解析を他の植物種へ拡張するために、約60種のゲノムデータセットを用いてシンテニーネットワークを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
SDI候補遺伝子の機能解析: 令和5年度内に全てのSDI候補遺伝子のクローニングを終了し、シロイヌナズナや各植物を用いた形質転換体の作製の完了を目指す。形質転換体は作製できたものから、遺伝子発現解析や代謝物変動解析を行うことで機能解明を進めていく。形質転換体の植物組織別サンプリングや硫黄欠乏実験等も行い、SDI候補遺伝子の生理学的機能の特定を目指す。 植物種間比較ゲノム解析: ゲノムデータ取得可能な植物種を追加し、シンテニーネットワークのさらなる拡張を目指す。また、アブラナ科植物、トマト、ダイズ、イネ以外の植物のSDIオルソログ遺伝子機能推定や硫黄欠乏応答性の評価を行う。
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