今年度の研究では、まず、カチオン性エンベロープ型人工ウイルスレプリカの巨大単層ベシクル(GUV)及びがん細胞への取込みを検討した。人工ウイルスキャプシドの外部表面に配向するC末端側にGluを導入したβ-Annulus-EEペプチドを合成し、その自己集合からなるアニオン性キャプシドとカチオン性脂質DOTAP及び両性イオン性脂質DOPCからなる脂質二分子膜との複合化によりカチオン性エンベロープ型ウイルスレプリカを構築した。そしてキャプシド側をTMR、エンベロープ側をNBDで蛍光標識したウイルスレプリカをアニオン性GUV及びHepG2細胞へ添加しCLSMにより取込挙動を観察した。その結果、どちらも膜融合を介した取込挙動が観察され、ウイルスモデルとしての応用が可能であることを示した。次に、SARS-CoV-2由来の膜タンパク質であるSpike (S) proteinを搭載したウイルスレプリカの構築を検討した。エンベロープウイルスレプリカ存在下で無細胞タンパク質発現によりS proteinを搭載したウイルスレプリカを作製した。作製したS protein搭載ウイルスレプリカを用いてイメージングフローサイトメトリー解析、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)、膜局在型ACE2-EGFP発現HeLa細胞を用いたCLSMにより感染に関与するACE2受容体との詳細な結合評価を行った。その結果、ウイルスレプリカ上に提示したS proteinにおいても野生型や変異型S proteinと同程度の強い結合が確認された。今後は、S proteinを抗原としたワクチン材料やACE2受容体発現細胞選択的なDDSキャリアへの応用が期待される。
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