研究課題/領域番号 |
22J23243
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中川 凌 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | バイオ燃料電池 / メディエーター / バイオセンサ / 酸化グラフェン |
研究実績の概要 |
バイオ燃料電池の設計において、現在までにメディエーター分子の構造や電極への固定化における明確な設計指針は確立されていない。本研究の目的は、酵素型バイオ燃料電池におけるメディエーター分子設計および電極設計の指針を明らかとすることである。 分子設計においては、これまでの私たちの研究でキノリン構造を由来とする含窒素型メディエーター分子を新たに開発している。2022年度は基本骨格に種々の官能基を導入した誘導体の合成を行い、それらの多くがグルコース脱水素酵素のメディエーターとしての働きを示した。また、酸化還元電位や水溶性、連続測定に対する安定性などの特性の調整にも成功した。しかしながら官能化した誘導体に共通して、燃料であるグルコースとの応答性が低下していくことが判明した。今後は応答性の維持さらにはより応答性を高めた誘導体の合成を試みていく予定である。 電極設計に関しては、電極材料とメディエーター分子との相互作用について理論計算を用いて評価した。具体的には、次世代の電極材料として期待される酸化グラフェンのモデル構造とメディエーター分子について構造最適化およびエネルギー計算を行った(ωB97X-D/6-31+g(d,p))。得られた計算結果より電極材料とメディエーター分子の相互作用エネルギーを算出した。その結果、対象とする含窒素型メディエーターは従来のものと比べて電極材料と強く相互作用しており、材料上でより安定化していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は含窒素型メディエーターであるquinoline-5,8-dioneを主骨格とした誘導体の合成に成功し、それらの特性評価を行った。その結果、官能基の種類による連続電気測定への安定性や水溶性、酸化還元電位への影響の知見が得られた。一方、酵素との反応性の低下が確認されたため、導入する官能基のさらなる検討を行い、より反応性を向上させたメディエーターの合成を目指す。 電極設計にいおいては、メディエーター分子に窒素原子を導入することで極性を大きくすることで、電極材料としている酸化グラフェンとの相互作用が強くなることが計算によって推察された。この結果から、バイオ燃料電池の長寿命化を目指すための電極設計およびメディエーターの分子設計の指針の構築に役立つことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後はメディエーター分子の誘導体合成を行うと同時に、電極材料への固定化するための最適化条件(固定化するためのリンカーの長さ・親水性など)の確立を目指す。これらの材料を用いて実際のバイオ燃料電池を組み立て、電池およびセンサーとしての評価を実施する。
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