生物の光感知は光受容体および下流の情報伝達経路によって制御されている。微生物や植物が複数ファミリーの光受容体を持ち合わせているのに対して、動物種ではオプシン・クリプトクロムの2つのファミリーしか見つかっていなかった。近年、線形動物(線虫)Caenorhabditis elegansから既知の光受容体とは異なる特徴を持つ光受容体LITE-1が同定されたが、LITE-1はC. elegansおよびその近縁種にしか存在せず、他の線虫種がどのように光受容・伝達しているかは分かっていない。本研究では線虫Pristionchus pacificusの光忌避行動に着目し、順遺伝学的スクリーニングや遺伝学的手法を用いることで新規光受容体及びその下流の制御機構の同定を目指した。P. pacificusは進化遺伝学のモデル生物として確立され、大腸菌を餌に寒天培地上で容易に飼育可能・全ゲノム配列の解読・遺伝学的ツールの開発など研究動物として様々な利点がある。当該年度においては、昨年度作成した光伝達経路と予想される遺伝子のレポーター系統の詳細な解析を行い、候補となる光受容神経を5つに絞った。さらに、神経伝達を阻害するツールを5つの神経に発現させたところ光忌避行動が減少した。 本研究によりC. elegansとP. pacificusの異なる2種の線虫種において、光反応メカニズムの保存性と相違点を明らかにした。
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