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2022 年度 実績報告書

トンボと砂丘に学ぶ凹凸形状の流体力学的意義とその設計原理

研究課題

研究課題/領域番号 21J22603
配分区分補助金
研究機関広島大学

研究代表者

藤田 雄介  広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワード流体力学 / 昆虫飛翔 / 砂丘動力学 / 凹凸構造物 / 渦運動 / 死水領域 / 数値流体力学 / 流れ解析実験
研究実績の概要

本研究の目的は自然界にみられる複雑な形状をもつ物体周りの流れを解析し,その形状の流体力学的な特徴や形成のメカニズムについて考察することである.その具体的な対象として,トンボ翼や砂丘を設定している.
本年度前半は主に砂丘の研究を行った.特に,卓越風下で観察されるバルハン砂丘後方の流れ構造について検討した.具体的には,縮小砂丘模型を作成し,前年度中に整備した実験用水槽を用い,流れの可視化実験を行った.その結果,砂丘動力学の研究者らが予想していた内巻きのらせん渦とは異なり,外巻きのらせん渦構造が観察された.そしてこの結果について,論文投稿を目指し,実験用水槽を再作成し,砂丘模型の設置方法や流れの可視化手法について再検討した.
本年度後半は主にトンボ翼の研究を行った.特に,これまでの研究で明らかになった,トンボ翼におけるラムダ渦の崩壊・噴出について,定量的な評価を検討した.具体的には翼上のある空間に注目し,その上での渦度,圧力を時空間分布で可視化し,その分布を定量化した.その結果,翼性能が向上されない場合に共通した傾向が観察された.得られた結果は,これまでの結果と合わせて論文にまとめ,まとまり次第,投稿予定である.また,ラムダ渦の崩壊と翼性能向上の関係における普遍性について,レイノルズ数依存性を整理したところ,レイノルズ数が数百程度まで落ち込むとラムダ渦生成がなくなり,トンボ翼の凹凸構造の影響がなくなることが確認された.このほか,前年度から検討していた,凹凸構造の違いによる翼性能の変化について検討し,その結果の一部を論文にまとめ,報告した.
そして,一見関連の薄いように見える砂丘とトンボ翼の関係性について,研究会発表やセミナー発表を行い,非線形科学の専門家らと議論した.
これらの結果については,査読付き論文1件,国際会議2件,国内会議8件の発表を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

砂丘の研究について,砂丘動力学の研究者らが予想していたとは異なる流れ構造を発見し,その流れの可視化手法についての議論が概ね完了したため.また,論文投稿に向けて,今後取り組むべき課題の設定についても,検討が完了しつつあるため.
トンボ翼の研究について,凹凸構造の変化に対する流れ解析を行い,その結果について報告が完了し,レイノルズ数依存性に対する理解を深めることにも成功したため.また,当初の予定にはなかった,渦運動の定量化について検討し,一部成功したため.

今後の研究の推進方策

砂丘の研究について,前年度まで研究の結果,以前の予想とは異なる流れ構造を発見したが,その普遍性について検討は不十分である.そこで,バルハン砂丘の幾何構造に対し,パラメータによる特徴づけを行い,流れ構造の普遍性について検討する.流れ解析の結果から,砂輸送を見積もり,バルハン砂丘の形成について検討する.可能であれば,砂丘模型を複数並べ,流れ解析実験を行い,砂丘群相互作用について検討したい.
トンボ翼の研究について,前年度までの2次元数値計算の結果,ラムダ渦の崩壊と翼性能向上機構の関係を明らかにし,そのレイノルズ数依存性や形状依存性を検討した.しかしながら,実験的な解析,検討は不十分である.そこで,前年度までに作成した実験用水槽を使用し,流れの可視化実験を行う.トンボ翼のような凹凸構造をもった,擬2次元模型を作成し,流れ解析を行い,凹凸構造による渦運動の様子を実験的に観察し,検討する.また可能であれば,2枚の翼模型を並べ,その隙間で起こる流れの様子や,これまでの数値計算の結果から得られているラムダ渦の崩壊を観察したい.

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] コルゲート翼の揚力生成機構における渦運動の対応づけ2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,飯間 信
    • 雑誌名

      第 46 回エアロ・アクアバイオメカニズム学会講演会資料集

      巻: 1 ページ: 6~8

  • [雑誌論文] Aerodynamic performance of dragonfly wing model that starts impulsively: how vortex motion works2023

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Fujita and Makoto Iima
    • 雑誌名

      Journal of Fluid Science and Technology

      巻: 18 ページ: JFST0013-1~10

    • DOI

      10.1299/jfst.2023jfst0013

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 縮小水槽実験による砂丘模型後方の渦構造2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,西森 拓,飯間 信
    • 雑誌名

      日本流体力学会中四国・九州支部第29回講演会論文集

      巻: 1 ページ: 9-1~9-2

  • [雑誌論文] コルゲート翼の動的特性のパラメータ空間における構造2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,飯間 信
    • 雑誌名

      日本流体力学会 年会2022 講演論文集

      巻: 1 ページ: 102-1~102-3

  • [雑誌論文] Aerodynamic performance and vortex motion of corrugated wing started impulsively2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Fujita and Makoto Iima
    • 雑誌名

      Proceedings of the 8th International Symposium on Aero Aqua Bio-Mechanisms ISABMEC 2022

      巻: 1 ページ: 94~96

  • [学会発表] コルゲート翼の揚力生成機構における渦運動の定量化2023

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,飯間 信
    • 学会等名
      第46回エアロ・アクアバイオメカニズム学会講演会
  • [学会発表] 凹凸構造物周りの流れの特徴とその役割 ~トンボ翼と砂丘を題材にして~2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,西森 拓,飯間 信
    • 学会等名
      Young Soft Webinar
    • 招待講演
  • [学会発表] 縮小水槽実験による砂丘模型後方の渦構造2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,西森 拓,飯間 信
    • 学会等名
      日本流体力学会中四国・九州支部講演会
  • [学会発表] 砂丘とトンボ翼を題材とした凸凹構造物周りの渦運動におけるレイノルズ数依存性2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,西森 拓,飯間 信
    • 学会等名
      第3回非線形・非平衡若手研究者のための大学間研究交流会
  • [学会発表] ジオラマ環境としての砂丘模型2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,西森 拓,飯間 信
    • 学会等名
      「ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学」研究交流会
  • [学会発表] 水槽実験による縮小バルハン模型周りの渦構造2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,西森 拓,飯間 信
    • 学会等名
      日本物理学会2022年秋季大会
  • [学会発表] コルゲート翼の動的特性のパラメータ空間における構造2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,飯間 信
    • 学会等名
      日本流体力学会年会2022
  • [学会発表] コルゲート翼の構造と渦の動力学に依存した揚力増大機構2022

    • 著者名/発表者名
      藤田 雄介,飯間 信
    • 学会等名
      2022年度研究集会「生物流体力学と生物運動」
  • [学会発表] Aerodynamic performance and vortex motion of corrugated wing started impulsively2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Fujita and Makoto Iima
    • 学会等名
      8th International Symposium on Aero Aqua Bio-Mechanisms
    • 国際学会
  • [学会発表] Reynolds number dependency on the aerodynamic performance of corrugated wing in unsteady motion2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Fujita and Makoto Iima
    • 学会等名
      75th Annual Meeting of the Division of Fluid Dynamics
    • 国際学会
  • [備考] 所属研究室のホームページ

    • URL

      https://fluid.hiroshima-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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