研究代表者は,四つのビピリジン部位を有するレゾルシンアレーンキャビタンドが一価の銅イオンと自己集合し,D4対称性の超分子カプセルを形成することを報告した。このカプセルは,らせん性に由来するPとMのエナンチオマーからなるラセミ体として存在する。二つのエナンチオマー間の相互変換は,溶媒によって制御されることがわかっている。研究期間を通じ大別して二つの研究成果を発表した。一つ目は,キラルな内部空孔をもつ超分子カプセルの構築である。適切なキラルなゲスト分子がアセトニトリル存在下でラセミ体のカプセルに包接されると,カプセルの軸性キラルが片側に偏ることがわかった。カプセルの包接空孔の要求する分子長をもつ水素結合三量体がキラルなゲストとして設計された。水素結合三量体は,酢酸二分子と不斉点をもつ酒石酸誘導体一分子から形成された。再沈殿により,カプセルに包接された水素結合三量体が取り除かれた。その結果,エナンチオ過剰率が最大92%の空のキラルなカプセルが得られた。キラルな包接空間に発光団をもつアキラルなゲスト分子が包接されると,発光団からCPLが観測された。また,キラルな包接空間に触媒部位をもつゲスト分子が包接されると,ゲスト分子が不斉触媒として働いた。二つ目は,分子サイズが可逆的に制御される超分子カプセルの構築である。二つのキャビタンドが四本のアルキル鎖で連結されたヘミカルセランドを合成した。それぞれのキャビタンドは四つのビピリジン骨格を有している。よって,銅イオンとビピリジンの配位結合の有無により,へミカルセランドが伸縮するため,空孔の大きさが変化する。結果,空孔の大きさにより生み出される特異的分子認識が制御されると考えた。内部空孔の大きさが可逆的に制御されることで,包接されるゲストの大きさ,立体配座,組み合わせが制御された。
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