研究課題/領域番号 |
22J13079
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢澤 順根 広島大学, 人間社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | クリティカルシンキング / 共感の正確さ / コミュニケーション・スキル / 学校適応感 |
研究実績の概要 |
クリティカルシンキングは「これからの社会を生き,より良い社会を作る」ために必要な能力であり,その獲得や教育による普及が求められている。しかし日本ではクリティカルシンキングに対して否定的な評価が連想されやすく,クリティカルシンキングの獲得が進んでいるとは言い難い。クリティカルシンキングの獲得を促進するためには,人々が魅力に思うような新しいクリティカルシンキングの有用性を示す研究成果が必要である。本申請課題は,クリティカルシンキング能力が高いほど,他者の心理状態を正確に推測できる(共感の正確さが高い)という採用者のこれまでの研究をもとに,クリティカルシンキングの社会的側面における有用性を明らかにすることが目的である。 初年度は上記の研究目的を実行するため,以下の2つのことを行った。1つ目は,当該年度前に実施した,日常生活の中でクリティカルシンキングがもたらす影響に関する調査で得たデータの分析と分析結果に基づく成果の発表である。分析結果から,クリティカルシンキング能力はコミュニケーション・スキルや学校適応感につながることが示唆され,実際の社会生活においても有用となる可能性が示された。研究成果の発表は初年度の国内学会および国際学会で行った。2つ目は前述の当該年度前に実施した調査の直接的追試である。当該年度前の調査はサンプルサイズが不十分であり,さらに調査対象者が女性のみであった。これらを踏まえ,サンプルサイズおよび性別を拡大した直接的追試を目的とする調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画に基づき,当該年度前に実施した日常生活の中でクリティカルシンキングがもたらす影響に関する調査で得たデータの分析を行った。事前にクリティカルシンキング能力は,大学生のコミュニケーション・スキルや学校適応感との関連があるという予測を立てており,おおむねそのような結果を得た。サンプルサイズや調査対象者の性別が限定的であったという点から,確定的な判断には慎重になる必要がある。しかしながらクリティカルシンキングは実際の社会生活においても有用となる可能性が示唆された点は本研究における1つの成果と言える。また,分析の結果は学会での発表を通して関連分野の研究者とも交流を行い,データが持つ示唆について議論を交わすこともできた。以上をふまえ,本申請課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として,まずは本年度に実施した直接的追試を目的とする調査の内容や分析計画について,Open Science Framework(OSF)へ事前登録を行う。次に登録した分析計画に従って調査データの分析を行い,得られた結果を学会等で発表する予定である。さらに,これまでの研究から得た結果を概観して全体から得られる示唆について,論文としてまとめる予定である。
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