研究課題/領域番号 |
22J20278
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大石 遼平 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
キーワード | 強相関電子系 / 量子臨界現象 / フラストレーション / 低温高圧実験 / ハニカム磁性体 |
研究実績の概要 |
CePt6Al3のPtを同族元素のPdで僅か5%置換すると反強磁性(AFM)秩序が発生することを先に報告した。このAFM秩序は,近藤効果または磁気的フラストレーションの抑制によると予想される。本研究では,CePt6Al3の近藤効果と磁気的フラストレーションの役割を調べることを目的とした。CePt6Al3の近藤効果を独立に抑制/増強するために,Ptを周期表で右と左に位置するAu/Irで置換し,5d電子/正孔ドープを行った。電子/正孔によって近藤温度が低下/上昇したが,固溶限まで磁気秩序は現れなかった。従って,キャリアドープをしないPd置換によるAFM秩序の発生は,近藤効果ではなくフラストレーションの抑制によることを示唆する。量子臨界近傍に位置すると予想されたCe(Pt1-xPdx)6Al3 (x = 0.024)の単結晶試料を作製し,低温の比熱/温度がx = 0よりも増大し磁気秩序しないことを確かめた。 同型構造の希土類ハニカム化合物RPt6Al3 (R = Pr-Tb)の磁性を調べるために,R = Gdの単結晶試料を作製した。磁化の測定から,GdPt6Al3が0.1μB/Gdの小さな自発磁化を有する反強磁性秩序を示すことを見出した。この自発磁化の要因は,ジャロンスキー・守谷相互作用によって,反強磁性的に配列したスピンが傾くためであると考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CePt6Al3のPtをAu/Irで置換して5d電子/正孔ドープすると,近藤温度が低下/上昇することを見出した。電子ドープによって近藤効果を抑制したにもかかわらず,磁気秩序が発生しなかったことは,Ce(Pt1-xPdx)6Al3 (x > 0.05)におけるAFM秩序の発生がフラストレーションの抑制によることを示唆する。この結果を低温物理国際会議で発表するとともに,J. Physics: Conf. Ser.に公表した。 希土類ハニカム化合物GdPt6Al3の単結晶試料を作製し,ハニカム面内で小さな自発磁化を有する反強磁性秩序を見出した。この自発磁化の要因をジャロンスキー・守谷相互作用であると考察した論文を,J. Phys. Soc. Jpnに公表し,日本物理学会2022年秋季大会で発表した。 以上の成果から,おおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
CePt6Al3のハニカム格子の対称性を制御し,量子臨界線近傍における非フェルミ液体あるいは特異な超伝導状態を探索する。さらに,ハニカム磁性体特有の磁気秩序状態を明らかにする。ハニカム面に平行および垂直方向に一軸応力を印加して比熱を高精度に測定することで,対称性の低下による磁気的フラストレーションの変化を調べる。応力印加によって比熱に磁気秩序を示唆する異常が現れたら,その基底状態を他のバルク物性(磁化・電気抵抗)測定とミクロプローブ(核磁気共鳴,中性子散乱,中性子散乱,ミュエスアール)測定で調べる。
Ce(Pt1-xPdx)6Al3 (x>0.1)の粉末中性子回折と核磁気共鳴実験の結果から,磁気構造を決定する。
希土類ハニカム化合物RPt6Al3 (R = Pr-Tb)の小さな自発磁化を発生させる原因として,ジャロンスキー・守谷相互作用,磁気的フラストレーション,反対称スピン軌道相互作用の可能性がある。これらの効果を識別するために,単結晶試料を作製し磁性と伝導を調べる。さらに,粉末中性子回折実験で磁気構造を決定することで,希土類ハニカム磁性体の特徴を見出す。
|