研究課題/領域番号 |
22J23064
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐伯 琳々 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 粉塵爆発 / 金属粉体燃焼 / アルミニウム粉体 / 火炎伝播 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,アルミニウム粉体の火炎伝播メカニズムを解明することである.当該年度では特にアルミニウム粉体が粉塵濃度が火炎伝播挙動に与える影響を希薄条件で調べた.予め粒径を変えて爆発下限濃度(MEC)測定を実施し,最もMECが小さく爆発発生可能性が高いと考えられる22 μmのアルミニウム粉体に着目した.希薄条件における火炎伝播挙動を調べるために微小重力燃焼実験を実施し,低速流れ場に浮遊する粉塵にエネルギーを与えて着火させた場合の火炎伝播挙動を観察した.また実際の粉塵濃度分布を可視化システムで実測し,MEC付近からアルミニウム粉体-空気混合物の化学量論比の範囲で粉塵濃度を変化させた場合(50-300 g/m3)について知見をまとめた.特に,極希薄条件においてアルミニウム粉体火炎は不連続的な形状を示し離散火炎になることを実験的に示した.この火炎伝播挙動の変化は,単一アルミニウム粒子の燃焼時間と熱伝導の特性時間のバランスで説明できる.粉塵火炎の特徴である数mmオーダーの分厚い予熱帯による効果や,特に希薄条件では粒子間の距離が長くなることにより,熱伝導の特性時間が長くなり火炎伝播挙動が変化したと考えられる.さらに粒径を変化させた(10-54 μm)実験においても,粒径が大きくなるほど離散的な火炎伝播挙動が観察された. 粒径の影響についても燃焼と熱伝導の特性時間で説明でき,特にミクロンオーダーのアルミニウム粉体では単一粒子の燃焼時間が粒径の強い関数になっている影響によるものと考えられる.このような極希薄条件における火炎伝播挙動の知見は燃焼限界の予測に繋がり,粉塵爆発リスク評価の高精度化に貢献することが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子と火炎の同時観察により粉塵濃度が火炎伝播挙動に影響を与えることが可視化できた.また当該年度の実験および解析を通して,今後取り組むべきパラメータを調べる際に必要不可欠な改良点についても明確に整理することができた.さらに当初は令和5年度の研究計画にあった実験装置の改良を先取りして対応し,可視化装置や粉体分散装置といった実験装置や手法についても改良を加え構築した.交付申請書に記載した研究の計画に対してやや軌道修正は必要となったもののおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に改良した可視化システムにより,従来よりも拡大して撮影することで,粒子分散性が火炎伝播に及ぼす影響をより詳細に調べる所存である.拡大撮影では撮像範囲が小さくなり観察可能な現象が限定されるが,新規の光学系によって予熱帯の粒子が火炎伝播に及ぼす影響に着目する.さらに粒径や雰囲気気体の条件を変化させて火炎伝播挙動に与える影響を詳細に調べる.
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