研究課題
本年度(最終年度)は(1)マウス生体を用いた実験系を主に実施し、(2)さらに昨年度から派生した、PME-1の脱メチル化酵素としての機能がマウスの発生や出生において与える影響の解明についてPME-1変異体ノックインマウスを用いて検討した。(3)加えて、PME-1の機能を網羅的に解析するためRNA-seqを実施し、細胞レベルでの機能を解析した。(1)については、Lcmt1遺伝子欠損が病態進行に与える影響の解析を行った。それに加え、クッパー細胞(肝臓特異的マクロファージ)がNASHの病態進行に与える影響を検討したが、その他の細胞(肝星細胞や血管内皮細胞)などの影響も大きいと考えられ、更なる検討が必要である。(2)PP2A特異的脱メチル化酵素PME-1をWTからS156A(SA)変異体に組み替えたヘテロ型遺伝子組み換えマウスを作製した。これらマウスを交配させ、ホモSAマウスを作製し本実験に応用させようと試みたが、出生後即致死の経過をたどることが明らかになった。この観点から、PME-1の脱メチル化酵素としての機能がマウスの発生や出生において必須の機能であることを明らかにした。特に、中枢神経系(特に小脳や大脳)に顕著な変化が認められ、多くの神経細胞の欠落が認められた。このことから、PME-1の脱メチル化酵素としての機能が神経細胞の細胞分化や細胞増殖において非常に重要な役割を果たしていると考えられる。(3)PME-1 の生理学的および病態生理学的な重要性にもかかわらず、PME-1 の発現の変化がtranscriptome に及ぼす影響は報告されていない。PME-1 KO MEFs を用いて RNA-seq を行い、PME-1 欠損が細胞内シグナル伝達に及ぼす影響を解析したところ、PME-1は炎症性シグナルの抑制および上皮間葉転換を促進させていることが明らかになった。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 692 ページ: 149148~149148
10.1016/j.bbrc.2023.149148