研究課題/領域番号 |
22J14599
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山口大学 |
特別研究員 |
森永 明日香 山口大学, 大学院創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 層状二酸化マンガン / 金属錯体 / 電気化学的アンモニア酸化反応 / オペランド赤外分光法 |
研究実績の概要 |
本研究では、層状二酸化マンガンの層間を「ナノ反応場」と捉え、金属錯体の設計と水分子を制御することで、理想的なナノ反応場設計法の構築を目的とする。本年度は、目的反応として電気化学的アンモニア酸化反応に着目し、異種金属錯体が共存する新規触媒合成とその反応メカニズム解析を行った。 (1)異種金属錯体を導入した層状二酸化マンガンの新規合成:嵩高い分子が挿入された層状二酸化マンガンを安価なNi錯体とCu錯体の混合溶液に浸漬させることで、異種金属錯体の挿入に成功した。活性評価と生成物分析を行ったところ、窒素選択的な電気化学的アンモニア酸化反応の進行を確認した。層間内への異種金属錯体共存により、既存技術では困難であった生成物選択性の向上に成功した。 (2)異種金属錯体の共存空間の構造解明:各種分光法(XRD, XPS, 高エネルギーX線散乱法)を用いた分子間の相互作用に基づく構造解析により、層間環境を可視化した。層間での異種金属錯体は単一金属錯体と比較して電子状態に変化が無く、想定通り金属錯体は孤立状態で共存していることを確認した。さらに、層間内の金属錯体の長距離秩序性を評価し、局所構造を予想したところ、孤立した金属錯体は隣接していることが明らかとなった。 (3)異種金属錯体共存下における反応メカニズムの解明:得られた触媒にて電気化学的アンモニア酸化反応を試みたところ、電位依存性のあるIRスペクトルが確認された。これらの吸収は、アンモニア酸化反応の反応中間体に対応し、層間内でのオペランド観測に成功した。この結果から、異種金属錯体は孤立状態で共存することで、反応中間体を移譲し、それぞれが得意な反応を担っていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異種金属錯体の共存におけるナノ反応場設計は、反応経路の選択性を制御することが可能であり、研究は順調に進展している。2種類の異種金属錯体を層間に独立して共存させることで、それぞれの得意な反応を進行させ、相乗的機能の発現に成功した。現時点では、導入した金属錯体を触媒活性点としての利用以外に、水分子や反応中間体の安定性を制御する分子の導入を試み、導入分子と反応種との相互作用や構造など詳細なメカニズムの解明している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、異種金属錯体の変更による更なる層間環境の理解を深めるとともに、水分子の制御に着目したナノ反応場設計を試みる。水分子が反応種となる水分解反応を目的反応とし、金属錯体の配位子設計により金属錯体と水分子の距離の制御、または、疎水性・親水性カチオンの導入による水分子の配向性制御を行う。これにより、従来困難であった水分子ネットワークの制御が可能となり、金属触媒とそれを取り巻く反応場全体のデザインをすることが可能となる。
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