研究課題/領域番号 |
22J14658
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
北村 菜央 山口大学, 共同獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 糖代謝 / タンパク質間相互作用(PPI) / mTORC2 / Akt / PDK1 |
研究実績の概要 |
タンパク質の機能は、他のタンパク質との結合と解離により誘起される構造変化や反応によって制御される。このようなタンパク質間相互作用(PPI)の異常は、細胞内シグナル伝達を乱し疾患の原因になる。本研究は、mTORC2シグナルに着目し、PPIの制御機構の解明を通して糖代謝の分子機構の一端を明らかにすることを目的に研究を進めている。 本年度は当初の計画通り、発光強度により結合・解離を定量化できる、発光系PPI解析システムを安定的に発現する細胞株の作製に取り組んだ。mTORは約7,500 bpと巨大であるため、発光PPI解析システムでの解析が困難であった。また、PP6ノックアウト細胞を用いてインスリン刺激時にPP6がmTORC2やAktなどのインスリンシグナル因子の活性化に与える影響を生化学的に解析したが、刺激によって顕著な変化は認められなかった。一方、mTORC2の基質であるAktの活性化は、PDK1によっても制御されることから、PDK1-Akt間の結合・解離を検出できる細胞株を樹立し、PPIの変化をリアルタイムに解析した。インスリン刺激ではAktとPDK1の結合は二峰性に増加し結合が緩やかに減少する一方で、成長因子(EGF)刺激では一峰性に増加し、速やかに基底まで戻った。興味深いことに、それぞれの刺激によってAktのリン酸化レベルは時間的にほとんど大きな変化は認められなかった。したがって、酵素であるキナーゼとの結合動態とリン酸化レベルの動態は相関しない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は発光系PPI解析システムを安定的に発現する細胞株を作製したが、本計画で重要なmTORC2複合体での解析が困難であった。また、PP6 KO細胞ではインスリンへの応答性に変化は認められなかったことや、インスリンでのPPIの観察が思うようにいかなかったことから、当初の計画を変更しなければならず、時間を要した。しかしながら、糖代謝に関わる他の因子に着目することで、安定的なPPIシステムの解析に成功しており、本システムを用いて今後検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、EGF刺激下でのPDK1-Akt PPIとAktのリン酸化レベルの変化を中心に解析することとした。次年度は、PP6阻害剤でもあるokadaic acidをはじめとした様々なAktシグナルに関連する試薬を処置し、PPIの変化とAktのリン酸化動態を網羅的に解析していく予定である。またインスリンおよびEGF刺激下でのmTOR複合体の構成やリン酸化レベルの変化についても検討し、mTORC2とPDK1によるAkt活性化シグナルの制御機構を解明する。
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