研究課題
研究代表者は免疫寛容誘導因子(ガングリオシド)搭載ポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソームがPEGに対する免疫寛容を生じさせた知見に着想を得て、PEG修飾カチオン性リポソーム(PCL)に抗原(DNA)とガングリオシドを共に搭載したDNA/G-PCLであれば、抗DNA抗体分泌B細胞に特異的に免疫寛容を生じさせることができるのではないかと仮説を立てた。そこで、抗DNA抗体分泌B細胞に特異的に免疫寛容を生じさせて抗核酸抗体の誘導を抑制することを最終目的とし、これまで研究を行ってきた。本年度はDNAとガングリオシドを共に搭載したDNA/G-PCLの調製、及びDNA/G-PCLの抗体誘導抑制効果について検討を行った。PCLとブタ脳由来ガングリオシド混合物をモル比で5%あるいは10%となるように混合することでG-PCLを得た。さらにリン脂質とDNAがモル比で40000:1となるようにG-PCL溶液とDNA溶液を混合することでDNA/G-PCLの調製に成功した。本リポソームをBALB/cマウスに投与し、5日後の血清中の抗体量をELISAにて確認したところ、抗PEG抗体の誘導は抑制されたものの、抗DNA抗体の誘導は抑制されなかった。この結果はガングリオシドの密度を変更した場合、および搭載するDNAを大腸菌由来から仔ウシ胸腺由来に変更した場合でも同様であった。来年度は核酸搭載量の変更や、siRNAなどへの変更などを行うことで抗DNA抗体誘導抑制効果の改善を目指す。
3: やや遅れている
当初の予定通り、DNA/G-PCLの調製に成功した。また、DNA/G-PCLの静脈内投与によってPEGに対する抗体の誘導を抑制することができた。一方で、DNAに対する抗体の誘導の抑制は確認できなかった。抗DNA抗体の誘導を抑制するために、ガングリオシドの搭載量の変更や、搭載するDNAについて、免疫活性化能の高い大腸菌由来のDNAから免疫活性化能の低い仔ウシ胸腺(哺乳類)由来のDNAへの変更などの検討を行ったが、未だ抗DNA抗体の誘導抑制効果は確認できていない。一方で様々な条件検討を行うことで多くの知見を得ることができたため、専門学会(日本核酸医薬学会 第6年会、2021年11月)の若手シンポジウムに参加し、口頭発表を行うことができた。しかしながら本来は来年度からはSLEモデルマウスを用いて評価を行う予定であったものの、まだモデルマウスを用いるまでに至っていないため、「(3)やや遅れている。」と判断した。
今後も抗DNA抗体の誘導抑制効果を得るために検討を進めていく。具体的には、核酸搭載量の変更、および搭載核酸の分子量に着目した変更を行う。これまでの検討において、搭載した核酸は1000 kDa以上であったことから、核酸がガングリオシドの受容体との結合を阻害している可能性を考えた。そこで、ガングリオシドが共にB細胞に認識されるためには一粒子あたりのDNAの密度を減少させる、あるいはガングリオシドと同程度の分子量の核酸を搭載するために、本年度は核酸搭載量の変更や、より分子量の低い核酸への変更などを行うことで、抗DNA抗体誘導抑制効果の改善を試み、改善が確認された場合にはSLEの予防への応用を目指す。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Pharmaceutics
巻: 601 ページ: 120529-120529
10.1016/j.ijpharm.2021.120529