研究課題/領域番号 |
21J23120
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高田 春風 徳島大学, 大学院薬科学教育部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫寛容誘導 / 全身性エリテマトーデス / 抗核酸抗体 / リポソーム / ガングリオシド |
研究実績の概要 |
研究代表者は所属研究室の先行研究である免疫寛容誘導因子(ガングリオシド)搭載ポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソームがPEGに対する免疫寛容を生じさせた知見に着想を得て、PEG修飾カチオン性リポソーム(PCL)に抗原(DNA)とガングリオシドを共に搭載したDNA/G-PCLであれば、抗DNA抗体分泌B細胞に特異的に免疫寛容を生じさせることができるのではないかと仮説を立て、これまで研究を行ってきた。昨年度は予想に反して抗PEG抗体の誘導は抑制された反面、抗DNA抗体の誘導の抑制は確認されない結果となったことから、本年度はDNAに対する抗体の誘導のみ抑制されなかった原因についての考察、及びその改善策の検討を行った。ガングリオシドおよびPEGは2 kDa程度である一方で、搭載したDNAは1000 kDa以上であったことから、DNAを認識したB細胞では立体障害によってガングリオシドを受容体であるCD22が認識できなかった可能性を考え、一粒子あたりのDNAの密度を減少させる、あるいはより小さい分子量の核酸(siRNA)を搭載することで抗核酸抗体の誘導抑制効果の改善を試みた。一粒子あたりのDNAの密度について、DNA/G-PCLのDNAの搭載密度を変更しても、抗DNA抗体の誘導は抑制されなかった。DNAをsiRNAに変更したsiRNA/G-PCLでも抗PEG抗体の誘導は抑制される一方で抗siRNA抗体の誘導は抑制されず、DNA/G-PCLと同様の傾向を示した。来年度は抗核酸抗体誘導抑制効果の改善が確認できなかった原因の究明に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、搭載核酸量の変更や搭載核酸のsiRNAなどへの変更などを行った粒子の調製に成功し、抗DNA抗体の誘導抑制効果を確認した。しかしながら、仮説に反して抗DNA抗体の誘導の抑制は確認できなかった。昨年度に続きネガティブデータが多い状況ではあるが、粘り強く研究を続けた結果、日本薬剤学会の学生シンポジウムSNPEE 2022にて発表を行い、優秀発表者賞を受賞することができた。また、様々な条件検討を行う中で、抗体の誘導機構についての知見を多く得ることができ、申請課題とは異なるテーマではあるが、その他5件の学会発表を行い、内2件で優秀発表者賞を受賞することができた。しかしながら、本来は今年度の条件検討で抗DNA抗体の誘導抑制効果を得られる組成のDNA/G-PCLの調製に至る予定であったものの、未だ到達できていないため、「(3)やや遅れている。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はなぜ抗核酸抗体の誘導抑制効果が改善できなかったのかについて、原因の究明に取り組む。具体的には、抗PEG抗体と抗DNA抗体の誘導経路に差異が存在している可能性を考え、まずDNA/G-PCL投与時の各抗原に対する抗体を分泌するB細胞の活性化(増殖)の差異について、フローサイトメトリーを用いて確認する。また、B細胞以外の免疫細胞(T細胞やマクロファージ)の抗体誘導への寄与について、胸腺を欠損したヌードマウス、クロドロン酸封入リポソームの投与によりマクロファージを除去したマウスを用いて確認する。さらに、核抗原特異的なB細胞間で膜上のCD22の発現量に差があるか否かについて、フローサイトメトリーを用いて確認する。以上の検討を通して、DNA/G-PCL以外の戦略によっても抗DNA抗体の特異的な誘導抑制効果を得られる可能性を見出した場合には、積極的に応用を試みる。
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