1990 年代に HDL-C と心血管疾患が逆相関することが報告されて以来、HDL は治療ターゲットとして研究者の関心を集め続けてきた。ここ数年においても、体内動態を制御する新規因子の発見や核酸の運搬機構などが発見され、今もなお発展を続ける分野であると言える。しかし、HDL へ直接的に介入、あるいは利用した創薬は未だ達成しておらず、HDL 関連因子の生理的調節について更なる理解が必要である。本研究ではHDL 結合タンパク質である ApoA-I binding protein(AIBP)に着目した。AIBP は HDL のコレステロール逆転送を促進するタンパク質であることが報告されており、アテローム性動脈硬化への治療応用が期待されている。しかし、生体内での発現や分泌、機能については未だ不明な点が多い。 マウス全 18 臓器のうち、肝臓で最も多く AIBP が発現しており、培養肝細胞においてもAIBP が多く分泌していた。ヒト血清における AIBP 濃度は Triglyceride や AST・ALTと強く正に相関した。培養肝細胞におけるパルミチン酸(PA)の添加および四塩化炭素(CCl4)による肝障害モデルマウスにおいて分泌 AIBP が顕著に増加したことから、AIBP は肝細胞へのダメージに応答して分泌されることが示唆された。以上より、肝障害の誘導が分泌 AIBP の機能解析における有用なモデルとして使用できる可能性を示した。
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