研究課題/領域番号 |
21J00885
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
柳原 未奈 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2026-03-31
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キーワード | 河川 / 水質 / 化学物質 / バイオアッセイ / 水生生物 |
研究実績の概要 |
本研究では、「多様な化学物質が存在する水環境において、それぞれの化学物質がどの程度毒性に寄与するのか明らかにすること」を目的の一つとしている。水環境中の化学物質と毒性の関係を解析するためには多くの毒性データが必要となるものの、コスト等の理由で不足する傾向にある。オランダは、毒性を評価する方法の一つであるin vitroバイオアッセイを、従来のモニタリングに加えて自主的に実施しており、化学分析の結果とともに毒性データを蓄積してきた背景がある。 本年度は、オランダのKWR Water Research Instituteにて共同研究の体制を構築し、①データの収集・予備解析、②実験のための予備調査を行った。①については、河川水中の化学物質濃度と、それに対応する生物応答試験のデータを収集した。オランダ国内の河川数か所において、化学物質濃度の測定とともに生物応答試験も実施されており、両者の関係性を解析した。予備解析の結果、化学物質間の複合影響を考慮した手法が必要であることが示唆された。②については、下水処理水を灌漑用水として活用する際の、水域生態系へのリスク評価を行うため、野外での試料採取や実験装置に関する調査を行った。アムステルダム大学との共同プロジェクトとして実施を計画しており、ここで得る化学物質濃度と生物応答試験のデータも、解析に活用する予定である。さらに、あらゆる生物種への影響を考慮するため、異なる生息域の生物種を対象に種の感受性分布を解析した。その結果、淡水域・海水域の間で生物の感受性分布はほぼ同じであることが示され、本研究での毒性予測において生息域をまとめて扱うことの妥当性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画で定めていた、環境データの収集について成果が得られた。また、それを用いた解析についても開始し、今後データセットの追加とともに手法の検討を重ねていく予定である。本年度の計画で予定していた実験は、当初の予定よりも幅広く試料を採取する計画に修正した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に整備したデータセットを用いて、環境水中の化学物質濃度から毒性影響を推定するモデルを構築する。データセット中の化学物質群を変数とし、機械学習モデルを用いて生物応答を予測する手法を検討する。物質間の相互作用を考慮するための統計モデルを構築し、予測性能の高いモデルの選定を行う。化学物質の毒性を推定するための手法の検討について、成果を国際学会にて発表する予定である。 また、研究機関KWRが保有するデータの収集を行い、毒性予測モデル構築のためのデータセットを追加する。KWRでは、オランダ国内の水道会社との連携により、環境水試料のin vitroのバイオアッセイデータ、その試料中の化学物質データが長年に収集・蓄積されている。それらのデータを追加し、モデル構築を推進する。 以上の解析と並行して、アムステルダム大学との共同プロジェクトとして、新たに環境試料の化学分析・生態毒性試験を実施するための検討を進めている。得られたデータは上記のモデルの評価に用いられる予定である。
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備考 |
新聞記事の監修:こども下水道新聞2021年版「世界の水環境」日本水道新聞社, 2022年3月
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