研究課題/領域番号 |
21J22080
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
下岡 和也 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 西南日本白亜紀深成岩類 / 白亜紀花崗岩類 / 白亜紀斑れい岩類 / 成因研究 / ジルコンメルト包有物 |
研究実績の概要 |
本研究ではジルコンメルト包有物の分析手法の開発と花崗岩岩石学への応用を目的としている。第一の到達点として、高温高圧溶融実験を用いたジルコンメルト包有物に関する分析手法を開発し、それらにトラップされたメルトと揮発性成分の組成を明らかにする。第二に、ジルコンメルト包有物から得られたメルトと揮発性成分の組成について全岩化学組成分析をはじめとした従来の花崗岩岩石学に応用することで、初生的なマグマの組成を復元する。最後に、ジルコンメルト包有物研究と従来の花崗岩岩石学との統合的な議論からマグマの正確な組成と固結年代・温度圧力・酸素分圧条件制約を行い、西南日本における白亜紀フレアアップ期の地殻の応答および、大陸地殻の成長過程を明らかにしていく。 本年度は、概ね申請当初の予定通り、西南日本に分布する白亜紀深成岩類について深成岩岩石研究およびジルコンメルト包有物の組成分析手法確立を行った。深成岩岩石研究については、野外調査によって得られた花崗岩・斑れい岩の化学組成分析を実施しするとともに、ジルコンU-Pb年代測定を行うことで、その形成過程を議論し、学会発表を行った。ジルコンメルト包有物の組成分析手法確立については、①ジルコン分離抽出方法、②ジルコンメルト包有物の均質ガラス化方法、③ガラスの化学組成分析方法のルーチンを確立し、現在、未知試料の分析に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は、西南日本に分布する白亜紀深成岩類について(A)深成岩岩石研究および(B)ジルコンメルト包有物の組成分析手法確立を行った。(A)深成岩岩石研究では、愛媛県高縄半島および島嶼部、香川県荘内半島の野外調査を行った。特に、愛媛県四阪島梶島を重点的に調査し、斑れい岩・花崗岩の岩石試料を採集するとともにその化学組成分析とジルコンU-Pb年代測定を行った。これら深成岩類の化学組成は、愛媛大学理学部設置のWD-XRFとカナダActLabs社に分析依頼を行うことで明らかにした。ジルコンU-Pb年代測定については国立科学博物館で実施し、現在その解析を行なっている。(B)ジルコンメルト包有物の組成分析手法の確立では、①ジルコン分離抽出方法、②ジルコンメルト包有物の均質ガラス化方法、③ガラスの化学組成分析方法、のルーチン確立を行った。国立科学博物館設置の高電圧パルス選択性粉砕装置(Selflag)を用いてジルコン粒を抽出し、愛媛大学理学部設置のピストンシリンダー型高温高圧発生装置によりジルコンメルト包有物の均質ガラス化を行った。均質ガラス化したメルト包有物をマウントし、走査型電子顕微鏡をもちいた組成分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
・2022年度 深成岩岩石学的研究では、西南日本に分布する白亜紀深成岩類について、引き続き国立科学博物館で年代測定を行うとともに、新潟大学で同位体組成分析を実施する。加えて、申請時の研究計画に加えて、新たにHf同位体組成分析を行うことにより、深成岩類の成因の中で特に重要である起源物質を明らかにする。また、ジルコンメルト包有物より得られる化学組成データから、rhyolite-MELTSを用いた深成岩類形成時の温度圧力条件解析を行う。 2021年度に確立したジルコンメルト包有物の組成分析手法を、西南日本に分布する白亜紀深成岩類中のジルコンに適用する。これらについてデータの解析を行い、確立させた研究手法と合わせて学会発表・論文作成を実施予定である。 ・2023年度 深成岩岩石研究およびメルト包有物の組成分析によって得られたデータを総合し、フレアアップ期の地殻がマントル活動によってもたらされた熱的・化学的影響を検討する。研究成果を博士論文に取りまとめるともに、国際学術誌に公表し、第10回国際花崗岩会議で成果報告を行う。
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