研究実績の概要 |
海棲哺乳類は浅海域から深海域,北極域から南極域まで世界中の海に進出しているが,その海洋進出は異なる時代にまたがって数回起き,進出初期には現在と大きく異なった形態を持っていた.これまで,海棲哺乳類の個別の分類群についてその進化を議論した研究はあるが海棲哺乳類の進化の全体像を同一の視点から比較検討する試みはほとんどなされていない.そこで,頭骨化石に残されている感覚器官の形態を基に海棲哺乳類の多様化・生息海域拡大の要因を明らかにする. 2019年度の到達目標はまず,絶滅種の古生態を明らかにするための基盤構築として,まず,現生哺乳類頭骨標本のCTスキャンを実施し,頭骨・脳・感覚器の三次元モデルの構築を行い,これらのデータの形態解析を実施すること.それらに加え,国内外に収蔵されている海棲哺乳類化石のCTスキャンを実施することである. そこで,国内博物館所蔵の現生海棲哺乳類標本データの取得,国外博物館所蔵の海棲哺乳類化石標本データの取得を実施し,1. 漸新世前期ー後期に生息した5種のヒゲクジラ類と,漸新世,中新世に生息した2種のハクジラ類と現生のハクジラ類を対象にその形態変化を比較, 2.漸新世から中新世にかけて知られるデスモスチルス類7種についてその形態変化を比較, 3.中新世に生息していたマナティー類とダイカイギュウ類と現生のカイギュウ類を対象にその形態変化を比較, 4. 中新世に生息していた基盤的アザラシ類のデスマトフォカ類現生のアザラシ類を対象にその形態変化を比較した.
|