研究課題/領域番号 |
21J00524
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小川 真治 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 異常磁気能率 / J-PARC E34実験 / 陽電子飛跡検出器 / シリコンストリップセンサー |
研究実績の概要 |
標準模型を超えた物理を探索するため、μ粒子異常磁気能率の超精密測定を目指している。先行実験においては、理論予測から4シグマ以上もの逸脱が報告されているため、独立な手法による検証が強く求められている。J-PARC E34実験計画では指向性の強いμ粒子ビームとコンパクトな蓄積磁石・陽電子飛跡検出器を用いる新しい手法を採用することで、先行実験の検証を目指している。 本研究では、そのために必要となる陽電子検出器の開発を行なっており、22年度にプロトタイプを製作予定である。21年度はプロトタイプ製作に向けた研究開発を実施した。本検出器の構成要素であるクォーターベーンは約10種類もの部材を張り合わせて構成されているため、その組み立て工程を確立する必要がある。21年度は簡易的な接着試験から始まり、接着剤の選定、位置合わせ用の治具の製作・試験と進めることで、実機製作に向けた各工程の確立を進めた。特に、センサーをフレームに接着する工程は、1um程度と極めて良い精度での位置合わせが要求される。そのため重点的に検討を行い、製作環境の改善等により以前よりも良い位置精度での接着を実現した。 これらと並行して、実機の検出器製作に向けた準備を行なった。21年度は検出器製作に必要となる温度管理のされたクリーンブースを高エネ研に設置し、必要となる各種機器(三次元測定機・接着剤塗布ロボット・オートワイヤーボンダー)の搬入・立ち上げ作業を実施した。これにより実機生産に向けた必要環境を整備した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検出器製作に向けたプロトタイプは当初21年度中の完成を目指していた。しかし、接着試験の結果を踏まえて専用治具の修正が必要となったこと等により遅れており、22年度中頃の完成を目指している。 一方、実機製作に向けて必要な環境整備は当初の想定よりも順調に進んでおり、設備はほぼ整った状況である。 そのため、全体としては順調に進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
21年度に引き続き、本検出器の構成要素であるクォーターベーンのプロトタイプの開発(接着手法の確立・治具の開発・製作物の性能確認)を22年度上半期に実施する。製作したプロトタイプを用いてメカ的な試験(排熱機構・サーマルサイクル耐性・真空中・固定時の変形など)および電気的な試験(時間変動する高磁場中での動作試験・テストベンチでの信号確認など)を適宜実施する。 実機の検出器は多数のクォーターベーンを並べて構成される。クォーターベーン同士をどのようにして高精度に位置合わせするかが課題であり、その解決のため22年度後半には検出器全体の構造設計を検討し、必要に応じてダミー部材による実証試験を実施する。
|