本研究は、B細胞免疫寛容の新規メカニズムの解明と、その機序の破綻による自己免疫疾患発症の仕組みを理解することを目的とした。 2023年度は、B細胞特異的Fcrl5の発現上昇が自己免疫疾患発症を誘導するメカニズムはなにか検討するために、BCRまたはTLRシグナルに着目し、Fcrl5 Tg(B細胞特異的Fcrl5過剰発現)マウスのB細胞の増殖や活性化マーカーを比較した。方法としては、単離したB細胞上に高発現するFcrl5をクロスリンクさせるため、抗Fcrl5抗体を用いて刺激し、同時に抗IgMまたはTLR7およびTLR9刺激を加えた。BCR刺激の存在下では、Fcrl5の過剰発現はB細胞の増殖や活性化に影響を与えなかった。一方で、TLR7またはTLR9刺激の存在下ではFcrl5シグナルによりB細胞の増殖や活性化マーカーの発現が増強された。 これらの結果から、本年度の研究ではFcrl5のB細胞における発現上昇はTLR7またはTLR9刺激の存在下でB細胞の過剰活性化を誘導し、その結果、自己反応性B細胞の免疫寛容破綻が誘導されることで自己免疫疾患の発症に関与している可能性を示した。さらに、本年度を含め、これまでの研究結果は、海外雑誌に投稿しており2023年に受理されている。
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