本年度は、海岸から海底まで連続した沿岸域における侵食地形の地形解析を実施した。高解像度な地形解析には、本研究にて開発したマルチカメラシステムを用いたSfM-MVS写真測量により取得した地形データを用いた。これまでに沖縄県与那国島の同箇所で複数回にわたり行なった計測の結果、約1年半の計測間隔で水深20mにて1m以上の礫が10m以上移動していること、5mを超える巨礫が6m以上運搬されていることなどが明らかになった。暴浪に伴う波浪によって沿岸域の地形と周辺に分布する礫が受ける影響を、海岸だけでなく海底まで延長して詳細に捉えることができた。また、この地域の地形データを基に波浪シミュレーションを実施し、暴浪時を想定した条件における流速値を推定した。測定によって求めた地形・礫の変化量と数値計算の流速値の空間分布がよく一致したことから、高解像度な地形計測に基づいた暴浪時の波浪エネルギーの推測とそれによる沿岸域の影響を定量的に評価することが可能となった。 さらに、本研究では海底地形の中でも特に測量が困難である海底洞窟の測量方法を確立させた。特殊な生物の住処や堆積物の安定した堆積場としての役割をもつ海底洞窟において、三次元的な空間分布や外部空間との位置関係を正確に把握することで、生物学や古環境学的な研究にとっても新たな知見が得られることが期待される。沖縄島、伊江島、下地島など複数地域の洞窟で行なった調査によって、これまで技術的に困難であった100mを超える規模の海底洞窟の3次元的かつ詳細な地形解析が可能となった。 これらの成果の一部は、INQUA(国際第四紀学連合)2023において発表した。
|