研究課題
低炭素鋼はフェライトの高温域から焼き入れし、50℃といった低温で時効処理を行うと、炭素クラスターが発現するなどして、200 MPaも強度上昇する。2021年度に実施したその場引張TEM観察において、転位が炭素クラスターに対して大きく張り出す様子を直接観察することに成功し、炭素クラスターが高強度化に直接寄与することを実証するに至った。また、ピーク強度以降において、炭素クラスターの中心部にε炭化物が析出する様子が観察され、炭素クラスターが鉄鋼材料の強度上昇に寄与するだけでなく、ε炭化物の分散状態を左右することが判明した。この結果を受けて、2022年度では、200℃で時効処理を行った低炭素鋼中の生成相の微細構造を、原子分解能STEM法によって解析することに取り組んだ。原子分解能STEM観察を行うことにより、炭素クラスターが体心正方晶構造を有して形成し、更にはε炭化物の前駆体として寄与することが判明した。2023年度では、鉄鋼材料におけるクラスタの有効活用手法の更なる拡張へ向けて、オーステナイト系ステンレス鋼におけるN-Crクラスタと転位の相互作用の解析に取り組んだ。原子分解能STEMとEDSを組み合わせて用いることで、転位周りの引張ひずみ場に、NとCrが共偏析する傾向を見出した。ここから、N-Crクラスタが転位の抵抗として寄与することで、オーステナイト系ステンレス鋼の高強度化が生じていることが判明した。この成果は、Scientific Reports誌 14巻 4360に公開済みである。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 14 ページ: 4360~4360
10.1038/s41598-024-54852-w
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http://zaiko13.zaiko.kyushu-u.ac.jp/