令和5年度は、新規ビタミンB12錯体であるpyrocobester の物性について、分光測定、電気化学測定とDFT計算を用いて詳細に決定した。また、pyrocobesterと酸化タングステン(WO3)を組み合わせ、可視光を駆動力、水やメタノールのようなグリーンな溶媒を電子源としたCo(I)種生成を検討した。ここでは、WO3とpyrocobesterをメタノールへ加え、可視光を照射することで、触媒活性種のCo(I)種を生成できた。また、溶媒をアセトニトリルと水の混合溶媒を利用しても同様にCo(I)種の生成を確認することができた。以上の結果から、本システムは可視光を駆動力、メタノールや水を電子源としてCo(I)種を生成できることを明らかとした。さらに、WO3+pyrocobesterシステムを環境調和型有機合成へ応用した。ここでは、トリクロロメチル化合物からのエステル化合物の合成に着手した。トリクロロメチルベンゼンとpyrocobester、Fine WO3をメタノール中に加えて可視光を照射すると、トリクロロメチルベンゼンを安息香酸メチルへ変換することができた。この結果は、メタノールを電子源、可視光を駆動力として生じたCo(I)種のpyrocobesterが触媒として働き、有機物質変換を促進したことを示している。 以上の実験に加え、令和4年度までに設計したB12-TiO2ユニットに関する研究も展開した。B12-Mg2+/TiO2を触媒とし、CBr3Fと2級アミンから有用なカルバモイルフルオリドを合成できる可視光駆動型システムを実現した。これにより、B12-TiO2ユニットの応用例を拡張することに成功した。
|