バイオ分野に存在する簡易に取得可能なラベルを用いた画像認識を目標として研究に取組んでいる。 この研究目的は、AIによるバイオ画像解析において実応用の障壁となる,AIモデルの学習に大量の教師データが必要という問題を解決するためのものであり、画像認識技術の実応用促進に寄与する研究である。 当該年度は、研究成果が医療画像解析のトップ会議であるMICCAIにおいて主著で採択された。さらに、バイオ分野に留まらず応用研究として医療分野に研究のフレームワークを拡張し、以下の2点の研究課題を進行中である。具体的な研究の内容を以下に記す。(1) 診断ラベルを用いた内視鏡画像認識:内視鏡画像診断では、画像診断時に患者単位の診断ラベル(患者から得られる画像の集合に対する診断結果)が記録される。この診断ラベルを活用した自動診断手法の開発に取り組んだ。具体的には、画像集合を入力として診断ラベルを推定するモデルを構築し、画像診断と同様に診断ラベルの推定が可能な深層学習モデルを提案した(MICCAI 2024 投稿中)。(2) 画像からの遺伝子発現の推定:細胞や組織の遺伝子発現観測技術の発展により、空間解像度を持った遺伝子発現データが病理画像と共に観測可能となりつつある。遺伝子発現データによりがんの発生過程の解明や遺伝子と細胞形態の関係性の解明に期待が持てる。しかし、この遺伝子発現データの撮影コストが高い。そこで、病理画像から遺伝子発現を推定することによる解析コストの削減に取り組む。具体的には、遺伝子発現データのデータの特性に着目し、観測データがポアソン分布に従うことを踏まえ、分布を推定可能な生成モデルによる遺伝子発現推定手法を検討している。
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