研究課題
本研究では、加水分解型タンニンであるペンタガロイルグルコース(PGG)の新たな機能である脳機能調節作用についてメカニズム研究を行い、加水分解型タンニンの食品因子感知機構(生体センシング機構)としてYの研究に焦点を当てた。また、以前の研究で明らかにした脳腸相関に関与するファクターの一つである機能性miRNA XがYを介しているのかを検討した。PGGまたは他の加水分解型タンニンを一つ選び、Y遺伝子を全身ノックアウトさせたC57BL/6Jマウスにその成分を経口投与した。まず、認知機能の評価(新規物体認識試験、Y字迷路試験、T字迷路試験)を行ったところ、選ばれた成分による認知機能の向上効果がYノックアウトによって抑制された。また、その成分によるウェスタンブロット法により、海馬での神経活性化および神経新生関連タンパク質の発現量増加がYノックアウトにより抑制された。さらに、PGGによるX因子の変動がYノックアウトによりキャンセルされることと、X因子の標的遺伝子である神経活性化関連タンパク質の発現量変動がYノックアウトにより認められなかったことが示された。また、In vitro実験では、Y遺伝子をノックアウトしたCaco-2細胞を用いて、腸上皮細胞様に分化させ、神経芽細胞種SH-SY5Yとの共培養システムを行った。その結果、管腔側にPGGを添加することでSH-SY5Yの神経活性化作用がYノックアウトによりキャンセルされた。これらの結果から、加水分解型タンニンによる腸上皮細胞のY因子を介したmiRNA Xの発現変動が脳機能調節作用を発揮する可能性が示唆された。
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