研究課題
採用2年目は統合失調症患者30名を対象としてクリック音を40 Hzの頻度で連続呈示する音刺激と、40 Hzよりも僅かに多い頻度で連続呈示する音刺激を9:1の割合で呈示し、後者の刺激を検出する課題を行い、健常群のデータとの比較を行った。統合失調症群は健常群と比較して、40 Hzと42 Hzの刺激を用いた弁別課題の成績が低く、弁別感度が低下していることがわかった。脳波解析の結果、統合失調症群は40 Hzクリック刺激に対するγオシレーションの刺激同期度が健常群よりも低かった。反対に、背景活動としての自発γオシレーションについては、健常群では抑制されるが、統合失調症群では逆に高くなることが確認された。さらに、実験で使用した聴覚課題を応用して脳波を指標としたニューロフィードバック訓練法を開発する準備を行なった。具体的には、音の弁別課題を行っている時の脳波をリアルタイムで解析し、脳活動を視覚的にフィードバックする。同時に、課題の正解・不正解もフィードバックし、脳活動を抑制しつつ、課題に正解するように教示を与える。このトレーニングを5日間実施し、1週間後に効果を確認するために同じ課題を行う。先行研究より、自発γオシレーションと言語性幻聴の症状に正の相関関係があることが知られているため、脳波を計測しながらリアルタイムで患者自身の自発γ活動を抑えるように訓練させる事によって、患者の意識的努力によって脳活動を調整し、その結果として統合失調症患者における言語性幻聴を緩和する認知生理学的治療法へとつなげることを目指す。
2: おおむね順調に進展している
統合失調症群でのデータ取得が順調に進んだため。現在実施している聴覚注意課題を用いてニューロフィードバック訓練のシステムを構築することができたため。
健常者を用いて予備的にニューロフィードバック訓練を実施し、システムを完成させたのち、統合失調症患者を対象としたトレーニングを実施する。
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てんかん研究
巻: 40(2) ページ: 440-440