研究課題
本研究の目的は、下層大気の影響が上層大気や地球近傍の宇宙空間に与える影響を明らかにすることである。特に、下層大気の影響を上層へ伝える役割を持つ大気波動に着目して研究を行ってきた。本年度は、3本の学術論文を発表した。これら3本の論文の概要は以下のとおりである。(1)赤道対流圏オゾンはエルニーニョによって、経度分布が変化する。このオゾンの変動に伴い、大気潮汐波の振幅が励起時に5%程度上昇する。増大した大気潮汐波が、高度100 kmの大気へと伝わることで、熱圏の風・気温の日内変動が増大することを明らかにした。(2)オーストラリア南極局・ユタ州立大学と協力し、南極域の大気重力波の季節・経度変化を明らかにした。豪国南極基地Davisと日本の南極基地Syowaは、同一緯度にあるが、40度程度経度が離れており、この2地点の観測結果を比較する研究を行った。その結果、両地点ともに冬に波活動が極大になることがわかった。しかし、冬から春に掛けてDavisの方がSyowaより急激に波活動が減少することが明らかになり、その要因は風速の経度分布であることを明らかにした。(3)二酸化炭素濃度が上昇すると、地表付近(対流圏)は気温が上昇するが、上層は寒冷化すること・平均風速が上昇することが知られている。我々は二酸化炭素濃度上昇に伴い、平均風速がなぜ上昇するのかを研究した。その結果、寒冷化に伴い熱圏のイオン濃度が上昇し、その結果、イオン抗力が上昇することがトリガーとなり、力学的平衡が変化することがわかった。この平衡状態を保つために、慣性力が変化し、風速が増加すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、3本の学術論文を出版し、概ね順調に進んでいる
現在、NASA/GSFCと共に米国の全大気モデル(WACCM-X)を用いて、前線に伴う対流活動が励起する大気重力波の研究を行っている。この大気重力波は、熱圏/電離圏まで伝播し、中規模移動性電離圏擾乱を作り出すことがモデルシミュレーション結果から明らかになった。本年度の前半は上記の結果をまとめ論文として出版することを目標とする。後半は、下層大気の重力波の発生頻度と電離圏擾乱の発生頻度の相関関係を観測から明らかにする予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件)
Geophysical Research Letters
巻: 50 ページ: -
10.1029/2023GL102790
Journal of Geophysical Research: Atmospheres
巻: 128 ページ: -
10.1029/2022JD037751
Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 127 ページ: -
10.1029/2022JA030643