研究実績の概要 |
本年度は、log VA(頂点代数)の最も有名な例である(1,p)-VOA(頂点作用素代数)のaffine版について、Alberta大学のThomas Creutzig氏および中塚成徳氏と共同研究を行い、A_1型の場合には詳細な結果を得てジャーナルに投稿した(査読中。一般のgの場合は現在進行中)。証明の鍵はFeigin-Tipuninおよび筆者による幾何学的手法と、逆量子ハミルトニアン還元と呼ばれる手法の融合であり、今後他のlog VAを研究する際においても有用であると期待される。また、受入研究者の樋上和弘氏とも共同研究を行い、(p,p')-VOAの指標とtorus絡み目T(2p,2p')の色付きJones多項式の間の関係を証明した(査読中)。これは(1,p)-VOAの場合にすでに知られていた結果の一般化であり、VAと量子トポロジーの未知の関係を示唆している。 研究期間全体を通じて論文の形になった結果は上記の2件のみだが、最も重要な発見は昨年夏になされた次のものであると考えている。Feigin-Tipuninの幾何学的構成により、対応するlog VAの指標公式が得られるが、このような指標公式を適切な格子VOAに繰り返し施すことで、ある種の3次元多様体のhomological blockと呼ばれる不変量を復元できる。このことは3次元多様体に対応するlog VAと、その「nested Feigin-Tipunin構成」の存在を示唆しており、この研究が成功すればlog VAの分野における長年の課題である「豊富な具体例の構成」と「統一的な研究手法の確立」を同時に解決できる可能性がある。計算に関する基本的なアイデアをまとめた草稿はすでにarXivに投稿したが、現在はその厳密化と、上記の(p,p')-VOAに対してこのような構成がVOAのレベルでも可能であることの証明に取り組んでいる。
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