研究課題/領域番号 |
22J11407
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 昌孝 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 膵癌 / ディスバイオシス / 癌微小環境 / マイクロバイオーム |
研究実績の概要 |
ヒト膵腫瘍組織に存在すると予後不良であるとされている歯周病菌Fusobacterium nucleatum (F. nucleatum)を腫瘍促進性に働く細菌の候補として着目し、研究を進めた。まず、膵腫瘍内に細菌が存在することを示すために、免疫組織化学染色を行い、グラム陰性細菌の構成成分を正常膵組織ではなく、膵癌組織で検出することを明らかにした。また、ヒト膵切除組織からDNAを抽出し、膵腫瘍組織と正常膵組織におけるF. nucleatum由来のDNA発現量をPCR法で評価した。F. nucleatum陽性膵癌は陰性膵癌と比較して、有意に無病生存期間や全生存期間が短縮していた。 膵癌細胞株とF. nucleatumの直接共培養によるMigration&Invasion AssayおよびCytokine Arrayを施行し、F. nucleatumが膵癌細胞へ与える影響を評価したところ、F. nucleatumは、他の歯周病菌と比較して、有意に膵癌細胞の遊走能と浸潤能を促進し、膵癌細胞のサイトカインAの産生を促進した。サイトカインAの受容体を阻害すると、F. nucleatumにより促進した膵癌細胞の遊走能が抑制された。 腫瘍内F. nucleatumが癌微小環境へ与える影響を評価するために、膵癌自然発生マウス由来の膵癌細胞株皮下移植モデルにF. nucleatumを腫瘍内へ投与したところ、他の細菌やControlと比較して、有意に腫瘍の増大を認めた。腫瘍を用いてFlow cytometryで免疫細胞を評価したところ、F. nucleatum投与群において、CD8陽性T細胞が有意に減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステップ【1】において、膵癌同所移植マウスの糞便とControlマウスの糞便のアンプリコンシーケンス解析を行ったところ、プロバイオティクスとされるAkkermansiaが担癌マウスの糞便では減少していた。またPCRでは、腫瘍内に存在すると予後不良とされる歯周病菌Fusobacteriumが担癌マウスで増加していた。ステップ【2】で、抗生剤カクテルで腸内細菌を滅菌したマウスに糞便移植を行う手技を取得し、担癌マウスとそうでないマウスの糞便を移植し、膵癌細胞同所移植マウスの腫瘍を評価したが、有意な変化は認めなかった。今後、膵癌患者から採取した糞便をマウスへ同所移植し、臨床経過とマウスの腫瘍の変化に相関がないか評価予定である。 ステップ【3】で、癌を進展させる可能性があるFusobacteriumと膵癌細胞株を共培養すると、癌細胞の遊走能が促進され、免疫抑制性細胞を腫瘍局所へ誘導するサイトカインAがFusobacterium共培養群において、有意に産生が促進されていた。今後はサイトカインCを抑制することによる治療実験や、サイトカインAを用いたin vivo実験を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
Fusobacteriumと膵癌細胞株を共培養すると、膵癌細胞の遊走能が促進され、Fusobacteriumが膵癌を進展させていることが示唆された。Fusobacteriumが生きた状態で作用しているのか、細菌の構成成分や代謝産物などのどの分子が膵癌を進展させているかというメカニズムを解明していく。 Fusobacteriumにより癌細胞の産生が促進されたサイトカインAを阻害して、膵癌の進展を抑制が可能かin vitro、in vivoで評価していく。 当初の計画では腸内細菌叢が直接的に癌の進展に影響を与えているとが考えていたが、腸内細菌叢が腫瘍内へ到達しない場合でも、腸内細菌の代謝産物が間接的に癌の進展に影響を与えていることが近年の論文でも報告されている。膵癌患者の腫瘍内や血液中の代謝産物を評価し、代謝産物を治療標的とした研究についても、検討していく。
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