研究課題/領域番号 |
22J11655
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀川 知紗子 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 卵母細胞 / RNA-seq / in vitro oogenesis / 生殖細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、核相と卵母細胞の細胞質(卵細胞質)の形成機構との関係を明らかにすることを目的とし、卵細胞質の構築機構に重要である8つの遺伝子をES細胞に強制発現させる事で、始原生殖細胞及び減数分裂を経ることなく直接的にES細胞から卵母細胞様細胞(Directly induced oocyte-like cell:DIOL)を誘導する卵細胞質の再構築系をモデルとし、形態的解析と遺伝子発現解析の統合的解析を行う。 本年度までに雌性生殖細胞のレポーター遺伝子(Stella-CFP)を持つ1倍体、2倍体、4倍体の各倍数体のES細胞の樹立を行い、それぞれDIOLへの誘導条件を確立した。二次卵母細胞期、GV期の各核相のDIOLについ形態的解析を行ったところ、由来するES細胞の核相に比例してDIOLの細胞質のサイズが増加する傾向にあり、4倍体のDIOLでは体内の卵母細胞と同等の大きさの細胞質が認められた。これは体内の卵母細胞のDNA量とサイズを反映するものであった。また、詳細な解析のためChromosome Spread法による核型解析と形態的解析を行ったところ、細胞質のサイズと核相の間には正の相関があることが明らかとなった。先行研究から多くの生物種においてゲノムの倍数性と細胞のサイズの間には正の相関が見られることが明らかとなっており、卵細胞質もまたこれに該当することが示唆された。これらの結果は、これまで明らかにされていなかった核相と卵細胞質の成長の関係に迫る新たな知見となった。 現在、核相の差による遺伝子発現の違いを探索するため、それぞれのES細胞と二次卵母細胞期、GV期のDIOLを回収し定量的RNA-sequencing解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度予定していた、倍数性の異なるES細胞からのDIOLの誘導とサイズの定量が完了しており、現在1年目後半に設定していた核相の差による遺伝子発現の違いを探索するための定量的RNA-sequencing解析を行なっている段階であるため、計画よりやや遅れている。原因としてはサンプルの回収とRNA量を標準化するERCC RNAのスパイクインの検討に想定より時間を要したことが上げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、定量的RNA-sequencing解析から抽出された候補遺伝子について詳細な機能解析を行う。まずは強制発現による機能的スクリーニング行うことで細胞質のサイズ決定に重要な遺伝子セットを絞り込んだ後、薬剤阻害やノックダウンにより、細胞質形成に関与する因子の同定やネットワークの解析を行う予定である。
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