研究課題/領域番号 |
22J11675
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 信太朗 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 光合成 / 温室 / 成熟日数 / 生殖成長 / 昼寝現象 |
研究実績の概要 |
イチゴ栽培において,光合成は重要な生理生態機能であり,生殖成長(開花,その後の同化産物の分配・流入による果実肥大,成熟など)と密接関与する.本研究では,高次元シンク情報(花数・果実数・果実重など)を考慮して生殖成長モデルを構築することを目指す. 上記の達成に向けて本年度では,①十分に灌水が行われている温室においても日中の環境ストレス(強光・高温など)によってイチゴの光合成速度は低下するのかを調査した.もし光合成速度が低下していれば,光合成速度を推定するモデル式にストレス係数を新たに設ける必要が生じる.また,②2019年度より3年間かけて取得した1670個の果実における開花日・毎日の果実重量(寸法より推定)・収穫日のデータを解析した. ①については,晴天日において,環境ストレスによる温室イチゴの光合成の低下を確認し,それぞれの要因がどの程度低下に関与しているのかを定量的に解析した.光合成制限の生理的要因は,比較的軽度の環境ストレス下では気孔閉鎖が支配的であるが,環境ストレスが増加すると気孔抵抗だけでなく葉肉抵抗の増加も主要となることが示唆された.つまり,今後使用する光合成モデルにおいてはストレス係数を乗じて日中の低下を表現する必要があることを確認した. ②については,まず開花から収穫まで要する日数(成熟日数)について解析を行った.従来では開花後積算気温が成熟日数の予測に用いられていたが,開花後積算光合成速度の方が予測指標として優れていることを統計的に示した.今後は光合成,着果負担(果実を維持するために植物体にかかる負担),および環境履歴を考慮して毎日の開花数の予測モデルの構築を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の「高次元シンク情報の評価法確立」には至っていないものの,計画にはないが目的達成に必要な「日中の光合成速度低下」の確認を行った.成果をまとめて英文雑誌に原著論文として投稿・受理されている.また,成熟日数の解析についても英文雑誌に投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,毎日の着果負担を数値として表現,高次元シンク情報として組み込み,ストレスを考慮した光合成速度,環境履歴と併用することで開花数・収穫数の予測モデルの構築を行う.
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