研究課題
イチゴ栽培において,光合成は重要な生理生態機能であり,生殖成長(開花,その後の同化産物の分配・流入による果実肥大,成熟など)と密接関与する.本研究では,温室イチゴの生殖成長動態の普遍的かつ高精度な予測モデルの構築に向けて,各環境要素・個葉光合成速度と生殖成長動態との関係を解析した.まず,一作期を通して取得した各環境要素(光合成光量子束密度PPFD,気温,湿度,CO2濃度,風速),個葉光合成速度,生殖成長動態(開花,収穫)のデータを用いて,収穫日の予測指標として開花後の積算光合成速度の有用性について検証した.そこで,光合成生化学モデル,気孔モデル,葉面ガス拡散モデル,葉面熱収支モデルを組み合わせたモデルを用いて,個葉光合成速度を長期連続取得した.また,個々の果実における開花から収穫までの各指標(PPFD,気温,個葉光合成速度の積算値)のばらつきに基づいて,それらの収穫予測指標としての有用性を統計的に比較した.その結果,個葉光合成速度の積算値が他の指標と比べて有用であることを初めて見出し,収穫予測モデルの構築に寄与する成果を得た.また,各環境要素と個葉光合成速度の履歴が,収穫予測において重要な基礎情報となる開花動態に及ぼす影響について評価した.三作期にわたって取得した第一果房の開花データを,指数関数と正弦関数を組み合わせたMalo modelを用いて回帰分析し,得られた各モデルパラメータ(開花動態を表す波の歪度,尖度)と,環境要素(PPFD,気温,湿度)および個葉光合成速度の履歴との関係を解析した.その結果,歪度には気温と空気飽差が,尖度には気温,空気飽差と個葉光合成速度が強く影響することを初めて明らかにした.以上,本研究は,膨大かつ正確な環境・生理生態機能の長期連続データを取得・解析し,温室栽培イチゴにおける生殖成長動態の予測モデル構築の基礎を築いた.
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HortScience
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