令和4年度における研究は、当初の計画に基づいて、主要な研究対象のブーヘンヴァルト強制収容所の他に、ザクセンハウゼン強制収容所や、西ドイツに位置するダッハウ強制収容所、ノイエンガメ強制収容所などに注目し、複数の強制収容所を比較することで、戦中・戦後におけるブーヘンヴァルト強制収容所の位置づけとその構造を把握することに主眼を置いた。さらに、それらの収容所における囚人たちの経験が戦後ドイツ史に何をもたらしたかを考察し、論文としてまとめることが今年度の目標だった。 複数の強制収容所を調査するために、国内で入手できる史資料の収集にあたった。特に、一橋大学附属図書館にてザクセンハウゼン強制収容所に関する史資料の調査をおこない、ザクセンハウゼンに収容されていた元囚人の証言や東ドイツにおけるザクセンハウゼンを記念した演説原稿などの史料を入手することができた。 これらの成果をもとにして、論文「戦後ドイツにおけるナチ被害者団体による歴史認識の構築―強制収容所の経験にもとづく歴史実践―」を執筆した。本論文は、ブーヘンヴァルト強制収容所の位置付けを他の強制収容所との比較で考察しながら、戦後、強制収容所の元囚人たちが自らの収容所の経験を、記念式典などを通して歴史として実践していったのかということを考察した。 しかし、査読の結果、分析の方法論が十分に整理されていないという指摘を受け、書き直しを要求された。この再提出期限までに十分な書き直しを行うことができず論文取り下げとなってしまった。
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