研究課題/領域番号 |
22J12102
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鶴田 哲也 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロカロリメータ / 超伝導転移端温度計 / ガンマ線 / 2次元位置検出 |
研究実績の概要 |
本研究の大きなテーマは大面積吸収体をもつ超伝導転移端温度計(以下TESと記述)型マイクロカロリメータで2次元位置検出を実証することである。そのため,令和4年度は主に本研究で使用するTESの製作と,新しく考案した2次元位置検出方法を実現する「スパイラルPoST型マイクロカロリメータ」のシミュレーションを行った。 1)本研究に使用するためのTES素子の製作を行った。製作したTES素子を希釈冷凍機で極低温(100mK)まで冷却を行い,TESの抵抗値を測定した結果,想定した転移温度が得られるTESであることを確認した。このTES素子に単ピクセルの吸収体を接着してガンマ線照射実験を行ったところ,2次元位置検出の実証には十分なエネルギー分解能を得られるTES素子であることが分かった。 2)大面積吸収体での2次元の位置検出方法として,配線数をより少なくすると同時に,吸収体が熱収縮することでTES素子が破壊される問題を解決することが出来るスパイラルPoST型マイクロカロリメータを考案した。この手法で2次元の位置検出が可能かどうかを確かめるために有限要素法を用いたシミュレーションや放射線挙動計算コードを用いた計算等を行った。その結果このスパイラルPoST型マイクロカロリメータは従来の1次元PoST型マイクロカロリメータと同様に位置検出をすることで2次元の位置検出が可能になることを確認した。考案したスパイラルPoST型マイクロカロリメータについてApplied Superconductivity Conference 2022で発表を行い,さらにIEEE Transactions on Applied Superconductivityに投稿して2023年3月20日に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では2次元平面型の吸収体を用いて4隅にTESを配置することで2次元の位置検出を実現しようと予定していたが,この手法では吸収体の熱収縮によりTESが破壊される問題があるため吸収体として用いる金属は熱浴として使用している銅と熱収縮率が近い値であるビスマスしか用いることが出来ないという問題があった。しかし,令和4年度にスパイラルPoST型マイクロカロリメータという独自の2次元位置検出方法を考案したことにより,熱収縮による問題を解決して様々な金属を使用することが出来る見通しが立った。さらにこの手法を用いれば配線数を4つから2つに減少させても2次元の位置検出が可能であるため,配線数を少なくしたいという従来の目標をより強力に達成出来るようになった。令和5年度に向けて新手法のスパイラルPoST型マイクロカロリメータの実証実験の準備段階であり,2次元位置検出の実証が現実的なものとなっていることを考慮すると本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究でスパイラルPoST型マイクロカロリメータのシミュレーションを行い,その結果,より確実な2次元位置検出の実証が可能であることが示唆された。そのため,従来の予定では2次元平面状の吸収体の四隅にTESを配置して2次元位置検出の実証実験を行う予定であったが,予定を変更してより確実な2次元位置検出方法であるスパイラルPoST型マイクロカロリメータの実証実験を優先して行い,令和4年度の成果であるシミュレーションの結果と比較して性能評価を行っていく。現在,実験前段階の最後の準備としてスパイラルPoST型マイクロカロリメータに使用する特殊な形状の吸収体の試作を行っており,第一四半期中には製作を完了させてガンマ線照射実験に取り掛かる予定である。その後の予定は研究計画通りに進めていく。
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