研究実績の概要 |
バクテリオロドプシンと脂質分子の2成分系において、理論・シミュレーションを用いてバクテリオロドプシンの相図を得た。バクテリオロドプシンを大円盤、脂質分子を小円盤へモデル化した。生体膜系を2次元平面へモデル化した。熱力学摂動理論を用いてバクテリオロドプシンの相図を求めた。脂質分子の数密度が上昇するとバクテリオロドプシンの流体ー固体2相共存領域が広がった。これは脂質分子の枯渇効果によってバクテリオロドプシンの結晶形成が促進されることを示している。この結果は Physica A, 630, 129260 (2023)にて発表した。さらに同様のモデルを用いて、シミュレーションからもbRの相図を求めた。イベントチェーンモンテカルロシミュレーションから剛体円盤2成分系の圧力を求めた。バクテリオロドプシン充填率の逆数と圧力をプロットした。その結果、ファンデルワールスループが得られた。マクスウェルの等面積則からバクテリオロドプシンの相図を得た。理論から得られた相図と同様に、シミュレーションから得られた相図は脂質の数密度が上昇すると2相共存領域が広がった。しかし、その広がりは理論から得られた相図よりも狭かった。このことから理論は枯渇効果を強く見積もっていることが分かった。さらにシミュレーションでは固相ー固相転移を示した。この転移は理論からは予測できなかった。理論では脂質分子間の斥力を無視しているため、シミュレーション結果を正確に予測できなかったと考えている。今後、脂質分子間斥力を取り込んだ理論の開発を検討している。また、シミュレーションから、バクテリオロドプシンの第二ビリアル係数を計算する方法を開発した。これを用いて、脂質分子の枯渇効果による実効引力を調べている。
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