研究課題/領域番号 |
22J20613
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤尾 秩寛 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙輸送 / 流体力学 / 深層学習 / 逆解析 / スクラムジェット / 最適化 / 感度解析 / 極超音速流体 |
研究実績の概要 |
高効率かつロバストな燃料混合を補助するスクラムジェットインテークの実現に向けた本研究は、高コストな数値シミュレーションを代替する深層学習を用いた流動予測、流動予測を用いた燃料混合最適化・感度解析、インテーク流れ場の制御を可能にする逆解析からなる。当初の実施計画に則って、これまでに深層学習を用いた流動予測に関して異なる2種類のモデルを提案しており、インテークおよび燃料混合流れ場に対して高精度かつ高速の流動予測を実現した。超音速流れ場を特徴づける不連続的な変化を伴う衝撃波に対して、従来モデルより精度よく予測できることが示された。また、両方のモデルにおいて予測の信頼性を高める目的で不確実性解析を用いた誤差推定手法も提案している。さらに、流動予測を用いた多目的最適化および感度解析の手法を提案し、インテークに対して実施した。この結果、最適なインテーク流れ場の特徴を解明でき、流動予測および最適化・感度解析の有用性を示した。 インテーク流れ場が燃料混合に与える影響を調査するため、衝撃波/噴流干渉による燃料混合促進に関する数値的研究を実施している。燃料混合の性能に影響を与える流れ場構造を明らかにするなど有益な洞察を得た。現在は超音速風洞実験による検証・非定常現象の観測に向けた準備に加え、多目的最適化の実施に向けて気流条件や形状変数の選定、シミュレーション手法の整備などに取り組んでいる。 また、高速かつ網羅的に設計を探索できる逆解析手法の開発にも着手した。深層生成モデルを用いて、性能変数の値に基づいて軸対称形態のインテーク形状を決定することに成功しており、より高度な逆解析の実現に向け課題を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は深層学習による流動予測モデルの構築、流動予測を用いた多目的最適化・感度解析手法の開発、燃料混合の多目的最適化・感度解析の実施を計画しており、流動予測モデルの構築と最適化・感度解析手法の開発において当初の計画以上の成果が得られた一方、燃料混合の最適化に関しては現在取り組んでいる最中である。 流動予測モデル構築に関しては、モデル生成にかかるコストと予測精度が異なる2つの手法を提案し、それぞれについてインテーク・燃料混合流れ場に適用可能であることを示した。 燃料混合に関する研究に遅延が生じている理由として、令和4年4月から現在に至るまで、これまで利用していた数値流体力学シミュレーション(CFD)ソフトウェアのライセンスが利用できない状況となっていることが挙げられる。OpenFOAMなどのオープンソースコードの利用を検討したが化学種輸送や化学反応を含んだ極超音速流体計算においては精度や計算速度・安定性に課題があり、次年度に新たにCFDのライセンスを購入する予定である。 一方で、この間に前もって、流動予測を用いた多目的最適化や感度解析のフレームワーク構築・環境整備を完了させることができた。これらを用いてインテークの多目的最適化と流れ場・性能に対する感度解析を実施し、これらの手法およびフレームワークの有用性を示した。また、当初2年目以降に実施する計画であった逆解析手法の構築にも着手している。深層生成モデルと呼ばれる深層学習モデルのうち最も基本的なモデルを用いて、性能要求に基づいてインテーク形状を決定することに成功しており、順調に進展している。 これらの状況を総合的に鑑み、「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、当初の計画に則って燃料混合の多目的最適化・感度解析およびインテーク逆解析手法の開発に取り組み、予定していた目標の達成を目指す。 ライセンス購入によってCFDツールに関する問題の解決が見込まれるため、燃料混合に関しては、これまでに提案した流動予測モデルを用いて衝撃波/噴流干渉による燃料混合促進の多目的最適化を実施する。燃料混合の最適化では最適解は性能を評価する位置や燃焼器の特性に左右されるが、流動予測と燃焼シミュレーションを組み合わせることで燃焼を考慮した上で最適な燃料混合を実現する。得られた解に対するデータマイニングおよび燃焼器内部流れに対する感度解析により衝撃波/噴流干渉に関する知見を獲得し、インテークの設計指針を再定義する。また九州大学の設備を用いて、超音速風洞実験による検証と非定常流体現象の計測も計画しており、現在模型の作成や測定系の構築等に取り組んでいる。 逆解析手法の開発については、これまでに研究を進めてきた深層生成モデルの更なる発展・改良に加え、本研究の逆問題に適した新たなモデルの開発に並行して取り組む。既存モデルの改良については、令和4年度までの取り組みにおいてモデルそのものの制約や仮定がモデルの適用性に影響することや、逆解析の入力である性能変数間の非独立性が問題となることなどが判明しているため、主にこれらの解決に取り組む。新たなモデルの開発では、より自由度の高い生成手法を利用することで高度な逆解析を可能にすることを目指す。 また、上記計画の進捗に応じて、これまでに開発してきた逆解析・流動予測・最適化アルゴリズムなどの技術を組み合わせ、効率的な設計探索手法の開発にも取り組む計画である。
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