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2023 年度 実施状況報告書

スクラムジェットインテークの先進的流動予測とデータ駆動型逆解析手法

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ2460
配分区分基金
研究機関九州大学

研究代表者

藤尾 秩寛  九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワードスクラムジェットエンジン / 深層学習 / 最適化 / 感度解析 / データマイニング / 圧縮性流体力学 / 宇宙輸送システム工学 / 逆解析
研究実績の概要

高効率かつロバストな燃料混合を補助するスクラムジェットインテークの設計手法の確立に向けた本研究において、実施計画に基づき本年度はスクラムジェットインテークが下流の燃料噴射・超音速燃焼に与える影響を調査した。特に、衝撃波と燃料混合の干渉が燃料混合に与える影響について、これまでに構築したデータ駆動型モデルベース多目的最適化・感度解析フレームワークを改良し、流動現象の解析を実施した。前年度までのフレームワークでは、モデルの予測誤差を考慮せずに解析を実施していたが、不確実性解析による誤差推定を組み込むことでモデルの予測誤差を考慮した解析が実施可能となった。このフレームワークを用い、2次元スクラムジェット燃焼器中の壁面からの燃料噴射に対し、効果的に燃料混合を促進し推力を増加させられる衝撃波/噴流干渉の形態を流動予測を用いた多目的最適化によって明らかにした。衝撃波の位置・角度、燃料噴射角度等によって決定される干渉形態が3種類に区分されることを示し、感度解析を通じて干渉の形態が変化する条件を明らかにした。これらの結果に基づいて、干渉形態の遷移を解析的な関係式によって表現することができた。また、燃焼計算を実施し干渉形態ごとの性能や衝撃波の入射が燃焼に与える影響を調査した。その結果、適切な位置に衝撃波が入射することで燃料噴射下流の低圧領域の圧力を上昇させ、OHラジカルの生成を促すことで燃焼効率が上昇することを明らかにした。干渉形態の遷移を検証すべく、現在、超音速風洞実験を進めている。準備はおおむね完了しており、次年度前半には実験を実施する計画である。また、前年度までに構築した流動予測手法をさらに拡張し、3次元流れ場や超音速燃焼流れ場への適用も実施している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、(1)前年度までに構築した深層学習による流動予測を用いた最適化・感度解析フレームワークの改良、(2)スクラムジェット燃焼器における燃料混合の最適化・感度解析、(3)超音速風洞実験の準備を主に実施した。特に(1)・(2)において、当初の計画以上の成果が得られた。(1)では予測モデルに確率的性質を与えることで不確実性解析を可能にし、これにより予測誤差の事前推定が可能となった。誤差推定によって予測結果の検証に用いるCFD回数を大幅に削減でき、解探索・感度解析における計算コストの大幅削減を実現した。(2)では(1)で改良したフレームワークを用い、燃焼器内での衝撃波による混合促進の最適化とデータマイニングを実施した。最適化を通じて得られた設計解に対し感度解析を実施することで最適解を特徴づける流体構造を抽出することができた。また、燃焼計算も実施しており、これまでに構築した流動予測手法が燃焼流れ場にも適用可能であることを確認した。(3)については、模型の作成、光学系・計測系の構築等が完了しており、実験可能な状態である。一方で、当初検討していたヘリウムを用いた実験から窒素を用いた実験に変更した。変更に伴って数値計算等を再度実施している。
これらの状況を総合的に鑑み、「(2)おおむね順調に進展している。」とした。

今後の研究の推進方策

令和6年度は、超音速風洞実験に加え、燃焼器からの設計要求を考慮したインテーク逆解析手法の開発に取り組み、予定していた目標の達成を目指す。
超音速風洞実験については、令和6年度前半中に実施できる見込みであり、準備をさらに進めている。
逆解析手法の開発については、(1)逆設計において入力として与える性能変数の選定、(2)深層生成モデルの比較を実施し、インテーク逆設計手法を構築する。これまでの取り組みから、燃焼器性能に影響を与えるインテーク流れの特徴量が明らかとなっており、さらにインテーク性能変数間の関係式が得られていることから、これらを用いて逆設計の入力を定義する。また、これまでに提案されている様々な深層生成モデルを実装し、インテーク逆設計問題に適用することで、本問題に適したモデル構成を明らかにする。また、これまでに提案している流動予測を用いた多目的最適化と比較し、計算コスト・精度での利点を明らかにし、取りまとめる。
また、上記計画の進捗に応じて、これまでに開発した流動予測・最適化・感度解析等を3次元/非定常/燃焼流れ場などより複雑な問題に適用し、その適用可能性を調査するとともに手法の改良に取り組む。

次年度使用額が生じた理由

超音速風洞実験の実施に向けて、ヘリウムを購入する予定であったが、入手が困難であったため。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] La Sapienza University of Rome(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      La Sapienza University of Rome
  • [雑誌論文] Fast and reliable prediction of scramjet flowfields via Gaussian process latent variable model and deep learning2023

    • 著者名/発表者名
      Fujio Chihiro、Akiyama Kento、Ogawa Hideaki
    • 雑誌名

      Physics of Fluids

      巻: 35 ページ: 046120

    • DOI

      10.1063/5.0148974

    • 査読あり
  • [学会発表] 宇宙輸送用スクラムジェットインテークの 多迎角同時モデルベース設計最適化2024

    • 著者名/発表者名
      藤尾秩寛,大宮康平,奈良知璃,柴北碧,小川秀朗,内山絵里香
    • 学会等名
      第63回航空原動機・宇宙推進講演会/北部支部2024年講演会 ならびに第5回再使用型宇宙輸送系シンポジウム
  • [学会発表] 深層学習による流れ場の予測を用いた スクラムジェットノズルの多目的最適化2023

    • 著者名/発表者名
      松長真宣,藤尾秩寛,大宮康平,新本みゆ,小川秀朗
    • 学会等名
      第63回航空原動機・宇宙推進講演会/北部支部2024年講演会 ならびに第5回再使用型宇宙輸送系シンポジウム
  • [学会発表] スクラムジェット燃焼器の作動特性と性能に関する数値解析と多目的最適化 - 衝撃波が燃焼性能に及ぼす影響の評価 -2023

    • 著者名/発表者名
      新本みゆ, 藤尾秩寛, 小川秀朗, Ekenechukwu Okafor
    • 学会等名
      第61回燃焼シンポジウム
  • [学会発表] Multi-Objective Design Optimization of Shock-Induced Mixing Enhancement via Evolutionary Algorithms Assisted by Data-Driven Approaches2023

    • 著者名/発表者名
      Chihiro Fujio, Hideaki Ogawa
    • 学会等名
      74th International Astronautical Congress (IAC2023 Baku)
    • 国際学会
  • [学会発表] Characterization of Shock-Induced Mixing Enhancement for Transverse Injection in Scramjet Engines2023

    • 著者名/発表者名
      Chihiro Fujio, Hideaki Ogawa
    • 学会等名
      25th AIAA International Space Planes and Hypersonic Systems and Technologies Conference (AIAA Hypersonics 2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] 深層学習による流動予測を用いた スクラムジェットインテークの多目的最適化2023

    • 著者名/発表者名
      藤尾秩寛,小川秀朗
    • 学会等名
      第54期年会講演会

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公開日: 2024-12-25  

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