研究課題/領域番号 |
22J20770
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
斎元 祐真 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | フェロトーシス / リソソーム / 脂質過酸化反応 / 蛍光イメージング / リソソーム膜障害 |
研究実績の概要 |
近年、鉄依存的な脂質過酸化反応 (LPO)を起点とする新規細胞死機序フェロトーシスが報告された。本細胞死は、がんに対する新たな治療標的として注目されているが、耐性を示すがん細胞が存在することからその克服が大きな課題であり、更なるフェロトーシス誘導機構の理解が不可欠である。これまでにフェロトーシス進行時には、小胞体やミトコンドリアなど様々なオルガネラ部位でLPOが生じることが報告された。しかしながら、どの部位におけるLPOが細胞死誘導の原因なのかについては未だ不明であり、フェロトーシス誘導機序の解明には至っていない。本研究では、蛍光プローブがLPOを検出かつ抑制する特性に着目し、細胞死誘導の引き金となるLPO生成部位の可視化及び細胞死誘導機序の解明を目的とする。最終的には、機序解明に基づきフェロトーシス耐性細胞に対するがん治療戦略の提示を目指す。 本年度はまず、既報の3種のLPO蛍光プローブが、フェロトーシス誘導の起点となるLPOを検出可能か明らかにするために、各種プローブのフェロトーシス抑制能を評価した。その結果、蛍光プローブNBD-Penが他のプローブに比べより低濃度でフェロトーシスを抑制することを見出した。また、本条件下で蛍光イメージングを行ったところ、フェロトーシス誘導初期にリソソームでLPOが生じることを明らかにした。これらの結果から、リソソームにおけるLPOが細胞死誘導の原因であることが示された。さらに、リソソームプローブや免疫蛍光染色法を用いてリソソーム内pH変動及びリソソーム内容物の局在を評価した結果、リソソームLPOはリソソーム膜障害を引き起こすことを明らかにした。以上より、フェロトーシス進行過程おいて、リソソームのLPOが重要な役割を担うと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)フェロトーシス誘導の引き金となるLPO生成部位の可視化、(2)生成部位に着目した細胞死誘導機序の解明、(3)機序解明に基づくがん治療戦略の提示、の3点を研究項目としている。本年度は、(1)のフェロトーシス誘導の引き金となるLPO生成部位の可視化を中心に取り組み、NBD-Penが細胞死の原因となるLPOを選択的に検出すること、フェロトーシス誘導時にリソソームのLPOを検出することから、リソソームにおけるLPOが細胞死誘導の引き金となることを見出した。さらに、(2)生成部位に着目した細胞死誘導機序の解明に関しても、本年度までにリソソームのLPOがリソソーム膜障害を誘発することを既に明らかにしている。これらの研究成果は計画通りの結果を示しており、経過は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、リソソームのLPOがフェロトーシス誘導の起点となることを明らかにした。しかしながら、リソソーム内LPOの惹起から細胞死に至るまでのメカニズムは不明である。そこで来年度は、(2)生成部位に着目した細胞死誘導機序の解明を重点的に進める。すでに、リソソームのLPOはリソソーム膜障害を引き起こすことを明らかにしている。リソソームには鉄が多く存在することから、リソソーム内鉄の時間的局在変動を解析することで、リソソーム内鉄の拡散が細胞死誘導に関わるか明らかにする予定である。その後、リソソーム膜障害前後のLPOを可視化・比較し、LPO発生部位の変化を解析する。
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