研究課題/領域番号 |
22J22522
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前野 岳大 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 筋幹細胞 / 新生筋線維(筋管) / 筋線維型 / 速筋型 / netrin-4 / neogenin / Unc5A / Unc5B |
研究実績の概要 |
骨格筋は筋細胞(筋線維)が束となり構成され、代謝・収縮特性の違いから遅筋型筋線維と速筋型筋線維に分類できる。骨格筋の量や質の向上には、筋線維の肥大や筋線維型の制御が不可欠である。筋線維型は、筋線維を取り巻く運動神経の刺激強度や頻度によって制御される機構が主流である。しかし近年、神経支配とは独立して、筋分化の過程で筋幹細胞が互いに融合して新生筋線維(筋管)を形成する際に細胞外因子を多量に合成、分泌することで、自律的に筋線維型が制御される新奇アイデアが示された。特に、筋幹細胞が合成するnetrin-4は筋管の速筋化の誘導とともに、筋管形成自体も促進する特異な因子であることを見出しつつある。そこで本研究課題では、netrin-4による筋線維型および筋管形成の制御に関与する受容体や細胞内シグナル経路といった詳細なメカニズムを解明する。 2022年度は、まず筋管の速筋化についての制御機構を解明するためにnetrin-4の受容体探索を行った。はじめに速筋型と遅筋型の筋管における受容体の発現量を比較したところ、neogenin、Unc5A、Unc5Bの受容体が速筋型の筋管で発現量が高かった。また、neogeninがnetrin-4に結合することも確認できた。以上の結果より筋管の速筋化に関与する受容体の候補を同定できた。続いて、筋管形成の制御機構に着目して検証を行った。筋幹細胞由来の継代筋芽細胞を用いて、netrin-4の発現抑制による筋分化に関わる転写制御因子の発現量を解析したところ、MyoDの発現量が減少した。さらに筋芽細胞同士の融合に直接的に関与する膜タンパク質であるMyomixerの発現量も低下した。MyomixerはMyoDによって転写が誘導される因子であるため、netrin-4→MyoD→Myomixerのシグナリング軸で細胞同士の融合を通して筋管形成に関与することが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
netrin-4による筋管の速筋化および筋管形成の誘導メカニズムの一端が明らかとなったため、当初の研究計画通りに進展している。また、netrin-4の受容体が速筋化に関与することを、過剰発現実験系で検証するために、neogenin、Unc5A、Unc5BのcDNAコンストラクト作製ならびに筋芽細胞へのcDNAコンストラクト導入により過剰発現することの確認作業は完了している。また、生体レベルにてnetrin-4の生理機能を捉えるための筋再生誘導実験について、サンプル回収を遂行しており解析のための準備は整えている。
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今後の研究の推進方策 |
netrin-4の受容体であるneogenin、Unc5A、Unc5Bのうち、筋管の速筋化に関与するものの同定と対象の受容体を介した細胞内シグナル経路の解析を行う。まず、筋幹細胞に対して各受容体の発現抑制処理や過剰発現処理を行い、表現型の変化を評価して速筋化に関与する受容体を同定する。続いて、受容体の発現抑制下でのnetrin-4の添加実験を行うことで、netrin-4が受容体を介して速筋化を誘導することを証明する。同時に速筋化に関与する転写因子(Six1、Mafs)の発現量変化や、筋線維型の制御に関与するAMPKシグナルやERKシグナル経路に関連するタンパク質の発現量やリン酸化の変化を確認することで、細胞内シグナル経路を明らかとし、netrin-4による筋管の速筋化メカニズムの解明を目指す。 さらに生体レベルにおけるnetrin-4の生理機能の探求も行う。筋再生過程での筋幹細胞や筋線維におけるnetrin-4や受容体の発現量解析を行うことで、筋線維形成ならびに筋線維型制御への関与を捉える。
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