研究課題/領域番号 |
22KJ2489
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浜野 凌 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 単層カーボンナノチューブ / 長さ依存性 / 架橋高分子 / サイズ排除クロマトグラフィー / 励起子 / 近赤外発光 / in vivo / 血中滞留時間 |
研究実績の概要 |
架橋高分子被覆SWCNTのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による長さ分画は、in vivo実験のために分取スケールにスケールアップ可能であることを実証した。また、分画後の架橋高分子被覆SWCNTのゲル層のマレイミド基へエンチオール反応でタンパク質の後修飾を行い、バイオ応用可能であることを示す結果を得た。これらの成果は外国語査読論文に採択された。架橋高分子被覆SWCNTの植物体への導入については、近赤外発光イメージングにより、SWCNTの長さに関わらず細胞間への局在が確認された。細胞内挙動の調査にはSWCNT表面の電荷制御が重要であるため、今後は局所化学修飾による変調された発光による細胞内物質センシングについてin vitroでの検討と同時に検討を進める。局所化学修飾SWCNTの変調された光学特性については、励起子トラップポテンシャルの深さと温度による脱トラップエネルギーの関係から、SWCNTの長さに依存して架橋高分子層の厚さが異なることを示唆する結果が得られ、発光イメージングとして応用するたのための基礎的知見を得た。これらの結果について論文投稿準備中である。架橋高分子被覆SWCNTのマウス血中滞留性および生体内分布の評価については、先ず長さが約100nmに限定されたSWCNTを用いて定量化実験を行った。コントロールとしてin vivo試験で標準的に用いられるPL-PEG分散SWCNTを用いこれと比較した結果、架橋高分子被覆SWCNTの血中滞留性および生体内分布はPL-PEG分散SWCNTとほぼ同等かわずかに優れた性能を有していることを示唆する結果を得た。免疫試験では新規の現象が確認されており、現象の詳細を考察するための実験が進行中である。この結果はSWCNTを始めとするナノ粒子の生体内動態を理解するための重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
架橋高分子被覆SWCNTのSECによる長さ分画の成果が外国語査読論文に採択・掲載された。植物体での発光イメージングおよびシグナル伝達物質のセンシングについては、測定装置の長期的深刻な故障など当初予期していない事態により計画変更を余儀無くされる事態となった。しかし、他同時平行して調査していた局所化学修飾SWCNTの近赤外発光に関する励起子挙動のSWCNT長さ依存性および界面環境の影響、マウス血中滞留時間・臓器集積のSWCNT長さ依存性および免疫反応について、それぞれ予想を超えた成果を挙げており論文投稿の準備中である。どちらもSWCNTの発光を用いたセンシングとin vivo応用に関連しており、植物体へ応用する際の実験手技、測定・分析技術に直結した基礎的・応用的知見が得られている。また今年度は関連研究で他3件の外国語査読論文が共著で採択された。加えて、他大学との共同研究を通じて植物体へのSWCNTの応用研究自体は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
植物体発光イメージングに使う予定であった測定装置の状態は深刻であることが判明しており、今後大掛かりな修理もしくは買い替えが必要な状況である。したがって、植物体でのイメージング・センシングに関するSWCNTのin vitro系の研究である、局所化学修飾SWCNTの励起子挙動のSWCNTの長さ依存性および界面環境については、代替案として外部機関の装置を用いてデモ的に近赤外発光イメージングが可能であることを示す実験を行っており、論文化の目処が立っている。植物体への応用研究自体は、引き続き国内外大学との共同研究を通じて進行する。また、マウスの血中滞留時間・臓器集積の長さ依存性に関しては、SWCNTと免疫系の相互作用の観点から実験を行っており、それによってSWCNTの生体内挙動を詳細に考察可能な段階であるため、引き続き実験を行い論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
諸般の支払いにおいて30円を使い切る調整が困難だったため。
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