研究課題
脳内出血は高い死亡率や重篤な後遺症を特徴とする疾患であるが、推奨される根本的治療薬は存在していない。そのため、病理形成機序の解明と治療薬候補化合物の探索・同定が求められる。これまでの我々の研究結果から、いくつかの核内受容体Nurr1作動薬が脳内出血病態に対して治療効果を発揮することが示された。しかしながら、Nurr1を治療標的とした研究結果について知見が断片的であるため、それらを明らかにし脳内出血に対する治療標的候補としてのNurr1の妥当性を明らかにすることを目的とした。マウス脳内出血モデルを用いて検討を行なった。脳内出血後の血球系細胞・免疫細胞の発現割合を調べるためフローサイトメトリーによる解析を行なった。その結果、脾臓および血液中における細胞種別の細胞数の比率に対してNurr1リガンドは著明な影響を与えなかった。出血誘発3日後の脳内には多数の細胞が浸潤しており、Nurr1リガンドはその浸潤細胞数を減少させた。これらの結果よりNurr1リガンドは末梢での影響は限定的で脳内の炎症反応などを抑制することで二次的に脳内への浸潤細胞を減らす可能性がある。また、これまでの検討によりNurr1リガンドは炎症反応非依存的に神経軸索路障害を軽減することが示唆された。そのため、皮質脊髄路を形成する大脳皮質運動野に、神経細胞特異的にNurr1を過剰発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを投与し、脳内出血後の運動機能を評価した。その結果、神経細胞特異的なNurr1過剰発現は運動機能障害を軽減するとともに、神経軸索の断片化も有意に抑制した。さらに、Nurr1による神経軸索保護のメカニズムとして, Nurr1が直接転写制御することが知られているglial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)-Ret経路の活性化が関与していることが示唆された。
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